国際情報

中国共産党 日本企業提訴の狙いはなりふり構わぬカネの強奪

 中国では日本企業に対する戦後補償を巡る訴訟が立て続けに起こされ、原告の数は日増しに増える一方。ついに日本企業の資産が差し押さえられる事態が起きた。

 中国当局は4月19日、海運大手の商船三井が保有する鉄鉱石運搬船を差し押さえた。1936年に日本の「大同海運」が中国の船会社「中威輪船公司」から借り受けた2隻の船は日本軍に徴用され、賃料が払われないまま終戦までに沈没したという。

 その未払い賃料と損失を巡り中国企業の経営者の親族が中国内で起こした裁判で、被告の後継会社である商船三井は2011年に約29億1600万円の賠償判決を受けた。商船三井の再審申し立ては却下され、原告に示談交渉を働きかけていたところ突然の強制執行を受けた。

 一部報道では日本政府は国際司法裁判所への提訴も検討していると報じたが、中国に国際司法裁判所で応訴する義務はない。日本政府は「日中間の請求権の問題は日中共同声明後存在しない」(菅義偉・官房長官)との見解だが、その後、商船三井は船が競売にかけられる可能性と、業務に支障をきたす恐れがあることを考慮し、賠償金約29億円に金利を加えた約40億円を供託金として裁判所に支払った。

 日本企業提訴における共産党の狙いとは何か。ジャーナリストの水間政憲氏はなりふり構わぬカネの強奪だと分析する。

「目的は日本政府から金銭をはじめとした譲歩を引き出すことだろう。今中国経済は減速して庶民の不安は高まりつつある。かといって貧困層に所得再配分ができるような予算はない。だから日本政府から経済援助、環境技術援助など、あらゆる譲歩を引き出そうとしている。

 庶民へのバラ撒きの“サイフ”として日本の政財界が狙われている。政治の自由がない中国で訴訟を起こすことは政治活動と同義。官製デモ以上に裁判所はコントロールされている」

 戦後補償問題はまだ始まったばかりだ。ジャーナリストの宮崎正弘氏は今後、日中間で政治的に重要な案件が出てくるたびにそのカードが切られる可能性を指摘する。

「秋に北京で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を有利に進めるための脅しなのか、または6月4日の天安門事件記念日を前に国際世論を自国から逸らすためか、二度と安倍首相に靖国参拝させないための脅しなのか、使い途はいろいろある。少なくとも強力な日本イジメのカードを手に入れたことは確かだ」

※SAPIO2014年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン