国内

PC遠隔操作事件により「被告を保釈するな」風潮出ること懸念

 警察、検察、メディアを巻き込んだPC遠隔操作事件は、片山祐輔被告(32)の「自作自演メール」発覚という思わぬ形で幕を閉じた。再勾留された片山被告だが、裁判を受け判決が確定する前の、いわゆる未決の被告の段階で、389日間と、1年以上も勾留されている。

 また弁護団が取り調べ状況の録画、つまり取り調べの可視化を求めても、検察は拒否してきた。過去の数々の 罪を生んできた環境で、片山被告が取り調べを受けていたのは事実だ。こうした捜査権力に疑義を呈することは、報道機関の重要な役割である。

 しかし、問題提起と片山被告が「シロかクロか」の判断は全く別の話である。その境界線を飛び越えて、「捜査のおかしさ=冤罪」という短絡的な結論を導けば、それは“誤報”という問題にとどまらず、司法に関する報道に大きな禍根を残すことになりかねない。元検察官で弁護士の郷原信郎氏がいう。

「“真犯人”からのメールを捏造するという片山被告のケースはあまりに特殊。今後、検察がこの事件を前例として『やはり被告人を保釈すると、どんなことをするかわからない。ずっと勾留しておくべきだ』と言い出すなら、それはあまりに乱暴な飛躍です。検察改革がやっと周知されてきたところだけに、こういう事件によって改革が逆行しないことを切に願います」

 今回の片山事件は、「司法改革反対」の格好の口実にもされ、司法改革の後退を招きかねない。だからこそ、「冤罪キャンペーン報道」は単なる正義感ではなく、十分な検証を重ねた記事作りが求められる。

 上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏の指摘。

「今回の報道は、片山被告の外見や性格、検察捜査の問題点といった、ある種のストーリー性にのっとった記事が目立った。わからないことを追い求めるという本来の姿勢ではなく、わかりやすい物語を追うような態度がメディア側になかったか、検証してほしい」

※週刊ポスト2014年6月6日号

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