国際情報

ハーバード大で中国人支援奨学金設立も「邪道だ」と疑問の声

 中国の不動産最大手のひとつ、SOH中国グループの潘石屹会長が7月中旬、米ハーバード大学に創設した奨学基金会が物議を醸している。これは同大で勉学する貧しい中国人留学生のための奨学金だが、本当に苦学生を助けようとするならば、「なぜ中国内で同じような奨学基金会を設立しないのか」との疑問が巻き起こり、「本当の目的は潘会長の子息が優先的にハーバード大に入学するためではないか」との批判の声が上がっている。

 潘氏は7月15日、米ボストン市内のハーバード大学を訪問し、ドルー・フォウスト同大学長と、同大の中国人留学生のために1500万ドル(約15億円)の奨学基金会を創設する合意書に調印した。

 その趣旨は「年収が6万5000元(約104万円)以下の貧しい中国人世帯の子息のため」というものだが、「両親が貧乏ならば、そもそも子息をハーバード大に進学させようとするはずはない」という疑問の声が上がっている。

 米国の非政府組織(NGO)「国際教育機関」によると、ハーバード大学で学ぶ中国人留学生数は686人だが、彼らの大半は国費留学生や企業派遣の留学生で、さらに習近平主席の長女の習明沢さんのように、党幹部子弟も多いといわれる。同大の現役中国人学生は中国で人気があるタブロイド紙「新京報」のインタビューに対して、「奨学金が必要な苦学生が多くいるとは考えにくい」との声を紹介している。

 さらに、「苦学生のための奨学金を出すというのならば、なぜ中国内で奨学基金会を創設しないのか。なぜ、ハーバード大学だけなのか」との疑問も出ている。

 これに対して、潘氏の妻で、同社の社長を務める張欣氏は「将来、世界的な活躍をする中国人留学生を助けるためで、今後はハーバードだけでなく、エール大学などにも同じような基金会の設立を考えており、複数の大学で、総額で1億ドル程度を出資したい。あくまでも、中国人の国際人材養成のための奨学金だ」と中国メディアに答えている。

 とはいえ、国際的人材の養成が目的ならば、中国内で基金を設けない理由にはならない。米国内の中国人留学生よりも、中国国内の学生の方が苦学生は多いからだ。

「新京報」は読者の声として、潘夫妻がハーバード大学に基金会を創設した目的は「息子をハーバード大学に入学させるためだ」と伝えている。「ハーバード大学に限らず、米国内の名門私立大学は寄付の額に子息を優先的に入学させる暗黙の了解があり、潘夫妻もそれを狙っている」というわけだ。

 これが当たっているとすれば、社会貢献を隠れ蓑に、自身のことしか考えない我田引水的な発想であり、ネット上では「自分の息子をハーバード大に入れるのは構わないが、それを慈善活動に結びつけるのは邪道だ」との声も出ている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン