ライフ
シリーズ『マルチ2世』

《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された

朝比ライオさん

朝比ライオさん

「兄と僕で、総額1000万円を母に渡しました」──そう語るのは『マルチ被害をなくす会』を立ち上げた朝比ライオさん(37)だ。自らも「マルチ2世」当事者として、被害の実態を訴える。

朝比さんの母親は1980年代からマルチ商法にのめりこみ、家族は崩壊したという。「僕の京都大学合格も就職も、すべて母の“成果報告”に利用されました」と振り返る朝比さんに、家族の壮絶な40年史を聞いた。【前後編の前編】

子どもの頃から家にはA社製品があふれていた

──朝比さんのお母さんは、40年近くマルチ商法を続けているそうですね。

「僕には兄と姉がいますが、母は兄を産む前後にA社に入会したようです。僕が物心ついた頃から、家には鍋や電磁調理器、浄水器、シャンプーなどA社の製品がたくさんありました」

──自分の生活が染まっていると気づいたのは、いつ頃ですか。

「小5ぐらいです。それまでは年に数回家族旅行をするなど、楽しい思い出もありました。でも母は『A社で成功したい、販売説明会をするための広いリビングがほしい、将来は自分の母と住みたい』と、夢を詰め込んだ二世帯住宅を新築したんです。1階と2階に独立キッチンのある6LDKで、土地と上物合わせて6900万円でした。

新居に引っ越すまでが、家族の幸せのピークだったと思います。あとは返済ですから。月20万弱の返済を、母はA社の収入で返そうとしたんです。家の中はいよいよA社の製品であふれました」

──販売はうまくいったのですか。

「全くダメです。A社に限らず、マルチ商法は一般的な商品よりも割高な商品を売るので、普通の人はまず買いません。それに売上の一部はアップ(*編集部注:マルチ商法に自分を勧誘した人や、自分より会員ランクが上の人)に上納するので、上層は儲かり下層は吸い上げられる構造です。利益は相殺され、基本的に赤字です。

でも母は『A社で稼げば返済できる!』と躍起になり、マルチの沼にハマっていきました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン