芸能

石原さとみ ハイブリッドな魅力はつかこうへい舞台で開眼か

 いまもっとも旬な女優、石原さとみ。なぜ視聴者はその姿に釘付けとなってしまうのか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 ドラマ「ディア・シスター」(フジ系木曜午後10時)でダブル主演の松下奈緒と石原さとみ。性格が180度違う対照的な姉妹を、二人の女優が上手に演じています。

 特に、妹役・深沢美咲を演じる石原さとみの挙動には、視聴者の視線が釘付け。「破壊的可愛いさ」「目力強すぎ」「唇エロい」と男性陣から大評判。ふとしたしぐさの愛らしさには、「あっぱれナチュラルビューティー」と、女性視聴者からの声。中には、狙いすぎ、作りすぎ、といった批評もあるけれど、それを凌駕する「絶賛の嵐」と言っていいでしょう。

 たしかに、最近の石原さとみは、すごい。CMでもドラマでも、彼女の一挙手一投足にぐぐっと目が惹きつけられてしまうのは私だけではないはず。

 今回のドラマ「ディア・シスター」では、迷彩色のざっくりとしたラフなシャツに短パン、目深にかぶったキャップといったカジュアルスタイル。かと思えば、胸が半分はみ出そうな派手キャバ嬢ファッション。自由自在にキャラクターをスイッチしていく。そのめくるめく変転ぶりが、見ていて飽きない。

もちろん、衣装だけではありません。唇をつき出し甘えるようなしぐさ、ネコのようにからみついてくる手足。と思うと、足蹴りに足組み。男のようにガバっとした手つき足つき。運動神経の良さを感じる体のキレ、シャープな身体感覚。

 つまり両極端を、ドラマの中で徹底的に遊んでみせる。「カワイイ」自分、アイドル女優へのこだわりを、いとも簡単に易々と飛び越えていってしまう、自由さ奔放さ、潔さ。それが、多くの人々の目を惹きつける要因なのでしょう。

 一言でいえば、「落差」。あるいは「幅」といってもいいのかもしれません。右から左まで。上から下まで。端から端へと行き来する。その落差と幅と奥行きが、3D的エンタテインメントを作り出している。 

「ツンデレ」どころではないその能力。身につけたきっかけはどこにあるのでしょう? もしかしたら、つかこうへい演出の舞台「幕末純情伝」(2008年)あたりに端緒があるのかもしれません。

 当時、舞台演出を手がけたつかこうへいは、主役に抜擢した石原さとみについてこう語りました。「一つ間違えると淫乱だなという顔。ちょっとそっち側に振ってやろうと思ってます」。

「幕末純情伝」の純情と、淫乱。新撰組の女闘士から、優雅なダンスシーンまで。一つの舞台の中で激しい「落差」に体当たりで挑戦した。自分の殻を捨てていろいろな自分になる、という快感にあの時開眼したのかもしれません。

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