「長引くデフレ」に「輸出企業の収益を圧迫する円高」といった構造的不況を政府や大メディアが喧伝してきたために、「インフレや円安は良いこと」と思い込んでいる人は少なくない。
しかし、円安は一握りの大企業だけが潤い、多くの中小企業を窮地に追い込むことになる。もちろん輸入超過国となった日本全体としても悪い影響のほうが大きい。
その悪影響は家計を直撃する。今年4月の消費増税のドサクサに紛れて増税分以上の便乗値上げが横行したが、来年は違う。消費増税が見送られたというのに、実にさまざまな商品で値上げラッシュが押し寄せようとしているのだ。その多くは即席麺や冷凍食品、アイスなどの食料品をはじめ、電気代やガス代といった身近なものばかりである。
各社に値上げの理由を尋ねると、「原材料費」「包装資材」「輸送費」の高騰を挙げる回答が目立った。
たとえば来年2月、1990年以来24年ぶりにギョーザなど冷凍食品60品目の値上げに踏み切る味の素冷凍食品は、「新興国の需要増から原材料となる牛肉が2013年度比約50%、豚肉が同35%も上昇し、包装資材や物流費も高騰するなか、決定打となったのは円安です」(広報部)と説明する。
主力のカップヌードルやチキンラーメンを5~8%値上げする日清食品も「肉や魚介類の原材料価格の上昇や包装資材の高騰」(広報部)を理由に挙げる。
3~10%の値上げ幅で並ぶアイスクリームメーカーでは、明治や森永乳業が「乳製品の高騰やエネルギーコストの上昇などで企業努力の限界を超えた」と口を揃え、ロッテアイスは「乳製品やチョコレート価格の高騰に加え、スティックアイスのバー(木材)の価格が上昇した」(広報宣伝部)と回答した。
※週刊ポスト2014年12月26日号