仮に子供や孫が現在5歳とすれば、ストレートで大学を卒業するまでに17年間、30歳になるまでには25年間もある。その間ずっと領収書をもらって毎年、金融機関に提出しなければならないわけだ。
そもそも、高齢者の保有する資産を消費拡大へと活用する目的で、特例的に贈与税や相続税を非課税にするというのなら、親や祖父母が贈った資金を子供や孫が何に使うかということについて政府が口をはさむこと自体がおかしいと思う。親や祖父母にもらったお金でゲームソフトを買おうが、スポーツ観戦をしようが、旅行に行こうが、個人の自由ではないか。
「とにかく3000万円までは何に使っても非課税」とすれば、高齢者を中心に貯め込んでいる約1600兆円の個人金融資産が一気に子供・孫世代へと移って消費が拡大するはずだ。
なのに、それらをすべて使途限定の“ヒモ付き”にしているということは、逆に言えば、中央の役人たちが規制を緩和したかのように見せかけているだけで、実際には手綱を全く離していないということだ。安倍政治は、あらゆる分野で官僚が非常に細かいところまで差配して管理を強化し、国民や地方や企業に対しては「恵んでやる」という“上から目線”なのである。
※週刊ポスト2015年2月13日号