元高校教師が「学校をつくる」という夢を追い求める青春群像映画『サムライフ』(公開中)。その原作者で、主人公のモデルとなっている長岡秀貴さん(41才)と、同作品に出演したマキタスポーツ(45才)が家庭の問題について語り合った。
長岡:ぼくは小児科で子供たちの心理相談をしていますが、“今度、お父さんも来てください”とお願いしても、来てくれないお父さんがいます。子供の一大事に時間を作れないっていうのは愛情を注いでないってことですから心配です。
というのも、家庭の問題には“経済的”“社会的”“文化的”の3つの貧困があるんです。“経済的”はその名の通り。“社会的”は“誰にも相談できない”環境で起こりうる貧困。いずれも福祉サービスや行政支援を受けると解消されます。でも、“母の過干渉、父の無関心”のような“文化的貧困”はなかなかぼくたち第三者が介入しても解消されにくい。
マキタ:それを解決するにはどうしたらいいんでしょうね。
長岡:ひとつ提案があるとすれば『日本昔話』の復活ですね。子供の育成には直接的恐怖ではなく、間接的恐怖が必要なんです。“悪いことをすると鬼が来るよ”とか、日本には恐怖を感じさせるような民話がたくさんあって、それを読み聞かせることで、“こういうことをするとこんな悪いことが起きる”と子供たちは学んできました。その中で親が自分たちを守ってくれる存在だと理解すれば、子供たちは尊敬するはずなんです。
マキタ:なるほど、確かにそうですね。文化とか風習なんて、裏を返せば無意味なものってことにもなるんだけど、記憶に残っていて教訓になっていたりする。家族そろって大晦日にそばを食べるとか、めんどくさかったりするけど、コミュニケーションの機会でもある。先人たちが長く続けてきたことは続けた方がいいと思いますね。
長岡:すごく大切ですよね。うちは子供が小学5年生になるまで、ぼくがサンタクロースの格好をして、プレゼントを渡していたんですが、ぼくのサンタはリアルに怖かったですよ。ニンテンドーのDSをあげた時も、メイクして、ヘリウムガスで声まで変えて、“約束を破るとお前の目の水が蒸発する”とか脅していたから、(ゲーム遊びを)3時間以上やらないという約束をちゃんと子供は守ってました。
マキタ:かなり壮大なフィクションですね(笑い)。それにしても長岡さんの話を聞いていると、マンパワーのすごさを感じますね。異端で脱線しても、理想の学校をつくる。映画を通じてぼくもそのパワーを体感しましたが、改めて今日、お話しをして人の力ってすごいと思いました。
【長岡秀貴さん】
『サムライフ』原作者。5年間の教師生活の後、2004年『認定NPO法人侍学園スクオーラ・今人』を開校。学園活動の他、総合病院の小児科で子供たちの心理相談にものっている。
【マキタスポーツ】
映画『サムライフ』には居酒屋店主・コイデ役で出演。著書は『アナーキー・イン・ザ・子供かわいい“父親に成る”ということ』(アスペクト)など。12才、7才、生まれたばかりの双子の4人の子供の父でもある。
※女性セブン2015年3月12日号