国内

「ぼく達は戦争に行かないぞ」 若者たちの反戦運動に違和感

 各地で反戦集会が活発になってきた。だがコラムニストのオバタカズユキ氏は、安保法制に反対しながらも集会の声に違和感を持つ。なぜなのか、考えてみた。

 * * *
 このところ週末になると都心をはじめとした大都会の一部で、それなりの規模の反戦集会がおきている。安倍政権が成立させようとしている安全保障関連法案に対する抗議行動だ。

 いわゆる安保法制は憲法違反だし、自衛隊の活動範囲を広げるならば、解釈改憲ではなく現憲法下での憲法改正を経てからすべきだと考えるので、私も安倍政権の安保法案には反対だ。

 でも、それに反対している草の根の声を聞いても、もやもやしたものを感じてしまうのだ。集会やデモなどの盛り上がっている様子がSNSに流れてくるたび、俺は君らにも同調できない、という気持ちになる。

 例えば、東京渋谷のハチ公前に大学生ら数千人が集まったという、6月27日(土曜)夕方の安保法案大集会。朝日新聞デジタルは動画つきでその様子を伝えた。動画を再生すると、壇上で、おそらく20代と思われる男性がマイクを片手に叫んでいる。

<この国の法案が通れば、他の国の戦争に日本の若者が巻き込まれ、命を落としたり、あるいは人を殺してしまう危険性が高まるということです。そんなこと絶対、許してはなりません!>

 私は、この演説からしてすでに違和感を覚える。揚げ足を取ろうというわけでは決してないと断った上で言えば、他の国の戦争に巻き込まれて命を落としたり人を殺してしまう危険性が高まるのは「日本の若者」か? 違うだろう。それは「日本の自衛官」だ。細かな言葉の問題ではなく、これは大きな認識のズレである。

 集会場には、色とりどりのプラカードが掲げられている。超党派的にリベラル勢力が結集した成果か、キャッチコピーはけっこうバラバラだ。目に入った順に並べてみる。

「ANTI Fascist」「国民の敵 自民党」「戦争させない」「NO! WAR 私たちは戦争したくない」「私たちは戦争立法に反対します」「THE WAR AGAINST WAR」「あたりまえのこといわせるな!!  NO!  WAR!! 日本国民に恥をかかせるな」「GIVE PEACE A CHANCE」「ぼく達は戦争に行かないぞ」「FIGHT FOR LIBERTY!」「I am not ABE」「憲法まもれ!!」「9条壊すな!」「死神総理」……。

 これまで見たことのないような、心にグッとくる反戦コピーは発見できなかったが、私が上記のうちで気になったのは、「ぼく達は戦争に行かないぞ」だった。そのプラカードを手にしていたのは、眼鏡をかけた中学生、いや下手をしたら小学校5、6年生の男の子なのであった。

 子供が反戦運動に加わっちゃいけないとは思わない。隣に似た眼鏡顔の中年男性がいたので、たぶんお父さんと一緒に参加したのだろう。そういう親子がいてもいい。けれども、だったらなおさら、そのお父さんに言いたい。あなたの息子さんが戦争に行く可能性はゼロに等しいのではないでしょうか。なぜなら、あなたは息子さんを自衛隊に入れる気などまったくないでしょ?

関連記事

トピックス

お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
『サ道』作者・タナカカツキ氏が語る「日本のサウナ60年」と「ブームの変遷」とは
《「ととのった〜!」誕生秘話》『サ道』作者・タナカカツキ氏が語る「日本のサウナ60年」と「ブームの変遷」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン