ビジネス

スズキ 脱カリスマ経営で問われる「新たなパートナー探し」

親子のトップ交代でも課題残るスズキ

「VW(独フォルクスワーゲン)との問題は、もうこれ以上待っていると、ウチの事業計画も遅れてしまいますし……、そういうことで今回決断したわけです」

 6月30日、これまで後継者問題に悩まされながら、じつに37年にわたって軽自動車メーカー、スズキのトップに君臨してきた鈴木修氏(85)が、ようやく長男の鈴木俊宏氏(56)に現場の指揮(社長兼COO=最高執行責任者)を譲り、会長(兼CEO=最高経営責任者)職に専念する人事を発表した。

“中小企業のオヤジ”を自認しながら、スズキを売上高3兆円規模の巨大メーカーにまで育て上げた修氏。だが、きれいに花道を飾るには心残りな課題が山積。そのひとつがVWとの資本提携解消をめぐる「揉め事」だった。

「スズキは2009年に小型車開発や新興国戦略を活用させる代わりに、VWの持つ次世代エコカー技術を供与してもらう約束で包括提携関係を結んだが、スズキ株の19.9%を握るVWが次第に主導権を誇示したために、スズキが猛反発。2011年11月に提携解消を求めて国際仲裁裁判所に提訴する事態になった」(全国紙記者)

 世界的に合従連衡が進む自動車業界にあって、資本関係の絡んだスズキの歴代パートナーは、今回のVW以外は燃料技術の共同開発で2008年まで資本関係を結んでいた米GM(ゼネラルモーターズ)ぐらい。修氏の強烈なリーダーシップとカリスマ性で自主独立路線を貫いてきたともいえるが、実際には他社とのアライアンスを避けてきたわけではない。

 自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がいう。

「スズキの商売道にタブーはなく、『あるのは実利だけ』というのが修氏の考え方。自分たちに少しでもメリットのある協業話ならば、相手の懐に飛び込んで『どうにでも使ってください』と下手に出ながら、ちゃっかりいろんな見返りを持ってくる。

 そういう意味では、VWに対等の立場を主張して譲らないのは、したたかな修氏らしくありません。それだけスズキといえども世界のメジャープレーヤーに伍していくのは難しいという危機感の表れなのでしょう。

 5年、10年先なら今のままでも成長できますが、これ以上、自動車のコモディティー(均質)化が進み、なおかつ値下げ圧力が強まってくれば、国内でクルマをつくりながら単独で生き抜ける保証はまったくありません」

 そうなると、気になるのはVW問題が決着した後のパートナー探しだ。

 現在、海外向けの小型車に積むディーゼルエンジンを購入するなど、伊FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)との関係は良好。しかも、修氏は「お世辞ですよ」と謙遜するものの、FCAのマルキオンネ会長はスズキを高く評価する発言をしている。果たして両社は提携拡大に発展するのだろうか。

「フィアットはGMに合併話を持ち掛けて断られたとの話も出ているほど、他社とのアライアンス戦略を急いでいる。もちろんスズキと組めばより低コストで手っ取り早く事業を拡大できるメリットはあるが、フィアットにとってスズキは単なるお得意先で、どうしても手に入れたい先進技術があるわけでもない」(前出・全国紙記者)

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト