そんな戸惑いを象徴する裁判が進行中だ。2003年に早大や東大の学生ら14人が準強姦罪で起訴された学生サークル「スーパーフリー(通称スーフリ)」による集団強姦事件で、かつて同サークルに入会していた男性が、事件とは無関係だったにもかかわらずグーグル検索でいまだに「事件に関与した元スーフリ幹部」と表示され名誉を傷つけられていると主張。米グーグル本社に対して検索結果の削除と慰謝料を求め、2012年に東京地裁に提訴した。
一審で男性側の主張は認められ、慰謝料30万円の支払いとともに検索結果の表示を禁じる判決が出た。ところがグーグル側の控訴を受けた2014年1月の東京高裁判決では男性の名誉毀損やプライバシー侵害は認定されず、逆転敗訴となった。
「男性側は上告し、年内にも最高裁判決が出る予定です。判決とともに注目されているのは、男性が高裁判決前に、グーグル側が削除請求に従わなければ『1日につき100万円の制裁金』を支払うよう仮処分申請を出し、裁判所が認めていることです。仮に最高裁でグーグルが負ければ提訴から約700日分、約7億円もの制裁金を男性は手にする可能性がある」(ある司法関係者)
一連の訴訟に対する見解をグーグルに求めると、「係争中の案件も含まれるため、コメントは差し控えます」と回答した。ネットの削除問題に詳しい弁護士の神田知宏氏がいう。
「個人の人格権を侵害するような過去をネット上から削除できる『忘れられる権利』は、罪を犯した人にもあると考えられています。ただし問題は権利を行使する人物が過去と決別し、本当に更生しているかどうか。この点が曖昧だと社会の理解は得られないままでしょう」
※週刊ポスト2015年7月31日号