ビジネス

ロッテグループ創業家の逆襲クーデター ドラマ的抗争の顛末

 菓子製造のロッテを中心に、ロッテアイス、ロッテリア、千葉ロッテマリーンズ、銀座コージーコーナーなどを傘下に抱え、日韓にまたがって事業を展開するロッテグループ。

 韓国ではホテルやテーマパーク、流通、精油化学などへ事業を拡大し、日韓の総売上高は5兆3500億円(2013年度)にも達し、韓国を代表する“財閥”に成長している。

 この巨大グループを一代で築き上げたのが、在日韓国人のカリスマ経営者、重光武雄(韓国名・辛格浩)氏だ。しかし、その二世である兄弟の間でいま、骨肉の争いが始まっている。

 これまでロッテグループでは、武雄氏の長男・重光宏之(韓国名・辛東主)氏が日本法人、次男の重光昭夫(韓国名・辛東彬)氏が韓国法人の経営を任され、お互い不可侵を守ってきた。

 しかし、武雄会長はすでに92歳で、健康上の問題を抱え判断能力にも衰えが見られるという。そこで起きたのが跡目争いだった。

 昨年末に、長男・宏之氏はグループ3社の取締役を解任され、今年1月には、グループの持ち株会社ロッテホールディングス(HD)の副会長の座からもはずされた。この時点で、宏之氏はロッテグループのすべての役職を失った。

 逆襲のクーデターが勃発したのは7月27日。この日の朝、宏之氏は、父・武雄氏をソウルのロッテホテル34階にある滞在先兼事務室から車椅子に乗せて極秘で連れだし、金浦空港に直行。チャーター機で日本に向かった。その電撃ぶりに、「金大中拉致事件」を思い出したほどだ。

 午後に東京に到着すると、武雄氏を連れて新宿のロッテ本社に突入し、宏之氏はその場にいた取締役に対して、「武雄会長を除いたロッテHD取締役6人を全員解任する」と宣言したのである。

 その後、武雄氏はホテルに移ったが、宏之氏が外部との接触を阻んだ。東京の自宅にいた武雄氏の妻・初子さん(宏之氏の母)がホテルを訪ねたが、会わせてもらえなかったという。

 翌28日、次男・昭夫氏が反撃に出た。緊急取締役会を招集し、「前日の解任は取締役会の決議なく行なわれた不法決定であり、武雄氏を日本ロッテ代表取締役会長から解任して名誉会長に推戴する」と提案。

 武雄氏が不在のまま採決が行なわれ、取締役会の賛成で可決された。1日にして父と兄のクーデターを弟が鎮圧。ドラマのような抗争だ。

※週刊ポスト2015年8月14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト