ビジネス

日本の機能繊維素材は世界一 だが純日本製衣服は風前の灯火

 業界紙、専門誌のめくるめく世界をあなたに──。今回は繊維市場、繊維業界全般のトピックを扱う業界紙を紹介します。

『繊維ニュース』
創刊:1950年
発行:日刊〈土・日・祝日休刊〉
部数:6万8000部
読者層:流通・アパレル業者、素材メーカー・商社、織布・ニッター
定価:1か月4088円
購入方法:読売新聞などの新聞販売店。

 オシャレな人も、そうでない人も、寝ても起きても、私たちは何かしら布をまとっている。人の暮らすところに、繊維あり。昨年は富岡製糸場が世界遺産に登録され、ますます日本の“糸”に注目が集まっている?

 繊維業界のことなら、たいがいはわかると言う、この道ン年の記者・鈴木康弘さん(61才)に聞くと「ふふっ。そう簡単にはいきません」と意味深な笑い。「とにかく繊維業界は広くて深いんですよ」と言う。

 私たちは「繊維」と聞くと、衣服を思い浮かべるが、繊維業界全体の生産量からみたら5割にも満たないという。ではそれ以外の用途は?

「身近なところでは、じゅうたん、家具、寝具。車に乗れば、シートやエアバッグ、タイヤにも繊維が使われています。炭素繊維は自動車や航空機、人工衛星を補強する部材になります。不織布はゴミ処理場の排気処理に役立ったり、紙おむつにも使われて、生産量を伸ばしています。変わったところでは、人工血管も繊維業者が開発したんですよ」

 空の上から下まで、私たちは繊維に包まれていたのか!

「うふふ。驚くのはまだ早い。まあ、これを見てください」

 鈴木さんがドヤ顔で記者の前に広げたのは、同紙の別冊『2015完全保存版 機能繊維素材・機能加工総覧』だ。タブロイド判の新聞に46ページにわたって、企業名、商品名、素材、特徴、用途が、ケシ粒大の文字で一覧表になっている。その一部を紹介しよう。

 たとえば、伊藤忠商事が開発した吸汗速乾繊維、“37.5”は、その特徴を〈火山灰由来の多孔質な活性粒子を特殊な技術によってポリエステルに練り込み…ミクロの孔に取り込んだ汗・水蒸気を素早く蒸発させることで、常に快適な衣服内気候を保つ〉とし、用途はスポーツウエア、アンダーウエア、靴下、手袋など。

 KBツヅキが開発した“TZ抗菌防臭加工商品”は、〈化粧品にも使われている安全な抗菌・防臭材を…化学結合させた肌に優しい加工。100回洗濯しても効果あり〉で、インナーやタオル、食品業者向けユニホームに。

 それぞれ違った機能を持つ糸を組み合わせて、衣料品メーカーは独自の布地をつくりあげる。「この別冊はその参考にしていただいている」と鈴木さんは胸を張る。

 こうした機能素材の技術力は「世界一です」と聞くと、こちらまで鼻が高くなる。

「そもそも日本には京都の西陣織など、奈良、平安時代から織物の産地が各地にあって、伝統工芸として今も細々と続いています。現代の洋服の布地も山形、群馬の複合ジャカード織物、北陸の合繊、静岡の別珍・コールテン、愛知の毛織物などがあって、その質の高さはシャネルなどの高級アパレルが買付けに来るほど。日本の布地がないとパリコレが開かれないとまでいわれています」

 日本、ちゃちゃちゃ! 早くも金メダルを取った気分。

「ところが、ですよ」

 鈴木さんはひと呼吸おいて語る。

「衣類の輸入浸透率は1986年は30%以下だったのに1999年には60%。2014年には97%まで増えています。日本製は100着中、3着しかない勘定です」

 風前の灯火ではないか! その中で気を吐いているのが、国産誕生から50年目を迎えたジーンズだ。

 同紙の『ジーンズ別冊』では、岡山のジーンズの染色・洗い加工の大手企業の工程を紹介している。

 ジーンズに中古感を出すためにグラインダーをかけ、膝や尻、腰回りなどをシェービング加工で擦り、レーザー光線を当てて焼いたりバーナーであぶったり。ペンキ加工を施したあと、洗い加工したりと、新品をビンテージに昇格させるための手業の数々は、正直、呆れるほど。

「今年の秋冬から純国産品であることがひと目でわかる“J∞QUALITY認証制度”がスタートします。売場で見かけたら手に取ってみてください」

 この秋冬はデニム・オン・デニムがトレンドと、『ジーンズ別冊』は伝えている。

※女性セブン2015年10月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン