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飲食店関係者 ヤクザと縁を切ろうにも切らせてもらえぬ苦労

 先月、警視庁が記者クラブに発表したとある恐喝事件は、メディアから大々的に報じられることはなかった。しかし被疑者である暴力団員・Aがキャバクラ等から集めていたみかじめ料は月額数百万円に上っていたとされ、その集金力には舌を巻くほどであった。

 暴力団排除条例などもあり、昨今ヤクザ業界も経済的に苦しいといった報道も出ており、みかじめ料などもはや過去のもの――そういった認識を持つ方もいるかもしれない。だが、その裏では、警視庁を始めとする警察の強い指導の下でヤクザと縁を切ろうと必死に戦っている人々と、(収入源を失いたくないために)縁を切らせまいとあの手この手で脅迫行為や嫌がらせ行為を繰り返すヤクザ組織の暗闘が続いている。

 複数のキャバクラ店やスカウト派遣会社に出資する形で事実上それらを経営しているオーナー・X氏らは、ひとつの事件を機に、Aらとの縁を切るように、警察の強い指導を受けた。キャバクラ・ホストクラブは、何かと地元ヤクザとの結びつきが強く、無用のトラブルを避けるために地回りのヤクザにエンソ(ヤクザ用語で「みかじめ料」のこと)を払っている場合が多い。警察が把握しているのは氷山の一角で、X氏が事業を展開するそのエリアでは実際には、9割以上の店が何らかの形で地回りにお金を払っているらしい。

 トイレットペーパーに何万円も払って領収書を切ったり、観葉植物のリース料などを表向きは堅気の植木屋に集金させたりするなど、手口は巧妙だ。

 前記X氏に聞くと、「各地域のヤクザにエンソを払ってきたが、警察の強い指導を受けた。確かに、このままでは自分達もヤクザの仲間になってしまい、従業員が夜の仕事を卒業して昼間の事業をやろうとしても、それの差し支えになりかねない」と、ヤクザとの絶縁を決心したようだ。しかし、「もう払いません」とヤクザに宣言してからが大変だった。

 冒頭に登場したA及び地回りのリーダー達は、X氏の店の関係者に対し、道端でメンチを切ったり、「このままで済むと思うなよ」「お前らのオーナーの住所は〇〇だろ。兄貴から指示が出たら殺しに行くと伝えておけ」と囁いたりするなどの脅しを開始した。

 さらには関係者の飲食店で従業員に「ここはサービスが悪いなあ」とか「こんなまずいもん食えるか!」などと絡んだり、ジョッキを割ったりと嫌がらせ行為を始めた。下っ端ヤクザの中には、X氏の関係会社が雇うスカウトを路上で見つけると、自分の恋人女性に声を掛けさせるよう仕向ける手口も登場した。声をかけているタイミングで交番に駆け込み、「あの人、違法行為をやっていますよ!」と警察にチクって、取り締まらせようとするのだ。もちろん、女性には警察が来るまで会話を続けるよう指示している。

 これは、自分達にエンソを払っている店のスカウト行為を援護するための行動である。エンソを払わないとこういったこともされるぞ、という懲罰的意味合いもある。もっとも、そういう実態を分かっていない警察官も存在する一方で、地回りヤクザに絡まれて110番したスカウトマンに「スカウトなんかやってるからヤクザに絡まれるんだよ、今度見かけたら逮捕するからな!」と説教するといったヤクザのケツモチのような警察官もいるらしく、これではヤクザと縁を切ろうとする店にとってはたまったものではない。

 実際、グループを離脱して地回りと一緒になって、前出のグループ関係者に嫌がらせする者も出てきているようで、地回りと縁を切ることの難しさを痛感する。

 いずれにせよ、彼らの縁切りは緒に就いたばかり。ヤクザ側も、山口組の分裂騒ぎの影響もあって収入の確保は死活問題で、簡単には引けない状況にある。警察を始め、現場の実情に真摯に耳を傾け、ヤクザと縁を切ろうと試みる彼らを支える態勢が十分でないと、彼らの縁切り達成はおぼつかない。

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