国際情報

米国防総省顧問「日本のODAが中国を強化したことを反省せよ」

米国防総省顧問のマイケル・ピルズベリ―氏

 中国はこれまでも、今後も、アメリカや日本の資本、技術、システムを利用、借用し必要なら盗み自国の総合的国力増大に努めてきた。では、日本は中国とどう向き合えばよいのか。米国防総省の中国エキスパートとして長くアメリカの対中国政策に関わり、近著『China2049』で中国が建国100年目に達成しようとする戦略について指摘しているマイケル・ピルズベリー氏(現・国防総省顧問)が独占インタビューに応じた。

 * * *
 日本は具体的にはなにをするべきか。

 まずはアメリカが過去に同盟国である日本にはまったく知らせずに、軍事や安全保障面で中国に与えてきた援助についてアメリカにその意図や責任を問いただすべきだ。

 アメリカは東西冷戦時代だったとはいえ中国軍のミグ戦闘機のレーダーなどの機能改善を直接に請け負ってきた。中国から大量に兵器を購入し、アフガニスタンでの対ソ連戦に投入した。中国の航空機国産事業に専門家を送り、援助した。さらに軍事目的にも資するロボット、レーザー、宇宙工学などの中国の国立研究施設の開設を支援した。

 こうした援助はみな中国の軍事力を含む国力を増強し、日本にも脅威を与える結果を招いてきた。私自身もこの種の援助にはかつて賛同した。

 だがそれは間違いだった。中国を強く豊かにすれば米側に同調してくると誤解したのだ。日本にはいまアメリカの過去のミスを政府や国会のレベルで問いただす権利がある。

 そのうえで率直に述べるならば、日本自身も中国の長期的な脅威に目覚めるべきだ。日本はまだ中国について、自国の存立を脅かしうる挑戦者として認識していないようだ。日本のODA(政府開発援助)や貿易、投資、技術供与がこれまで中国をどれほど強化してきたか、計算し、反省すべきだと思う。中国の強大なパワーはやがて日本への脅威や挑戦となって発揮されるのだ。

●Michael Pillsbury/1945年、カリフォルニア州生まれ。スタンフォード大学卒業、コロンビア大学大学院博士課程修了。国連本部勤務、ランド研究所分析官などを経て、ニクソン政権から対中国政策を担当。現在は国防総省顧問、ハドソン研究所中国戦略センター所長。

聞き手■古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)

※SAPIO2016年2月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン