賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
ヒゲを生やした白人の大男が、笑顔でポーカーチップを投げ上げている写真が表紙に踊る一冊の本。著者の欄には、マシュー・ボウヤーとある。ドジャース・大谷翔平(31)の元専属通訳、水原一平受刑者(40)を通じて約1700万ドル(約26億円)を受け取っていた違法賭博の胴元だ。
8月29日(米現地時間)、違法なスポーツ賭博の運営を行なったとして、米連邦地裁から1年1日の禁錮刑を言い渡されたボウヤー。その直前となる8月上旬、彼は自身の人生や過去の賭博運営について書いた“暴露本”を、すでに出版していたのだった——判決言い渡しの直前にボウヤー本人に取材をした、水谷竹秀氏がレポートする。(文中敬称略)【前後編の前編】
〈ショウヘイ・オオタニ その通訳と真実〉
「8月上旬に本を出版した。以前伝えていたあの本だよ」
ボウヤーからこのようなメッセージが届いたのは8月下旬。ボウヤーが判決を受ける10日ほど前のことだった。今年3月に初めてボウヤーと接触した時、「10月に水原や大谷に関する本を出版する予定だ」と聞いていたが、自費出版の形ですでに上梓していたのだ——。
水原が大谷の口座から違法にカネを盗み、スポーツ賭博をしていたという衝撃的なニュースが流れたのは2024年3月に遡る。水原を通じて、約26億円もの「大谷マネー」を手にしていたのがこのボウヤーだった。彼は2023年の10月、米捜査当局の家宅捜索を受け、のちに起訴される。司法取引の合意を経て8月29日、1年1日の拘禁刑を言い渡されている。
大谷がこの賭博にいっさい関与していなかったこと、水原が大谷になりすまして銀行口座のメールアドレスや電話番号を自身のものに変更し、ボウヤーに送金していたことなどは、すでに法廷で明らかにされている。
一方で「大谷マネー」を受け取っていた当人であるボウヤーがどのように水原と出会い、26億円という大金を得るに至ったのかについての本人の主張は、判決言い渡し直前のタイミングで一気に拡散した。ボウヤーは私を含めた米メディアの取材に応じ、当時の認識について大いに語ったのだった(大谷翔平の26億円を騙し取った“違法賭博の胴元”が告白!「水原一平、エンゼルスとの本当の関係」参照)。
そしてボウヤーは収監前に、自身の半生を綴った『RECALIBRATE(再出発)』を自費出版していたのだ。その内容のほとんどはタイトルの通り、胴元としての半生や出会った顧客とのやりとり、人生哲学などに終始しているが、Chapter6のタイトルにはこのようにある。
〈ショウヘイ・オオタニ その通訳と真実〉
ボウヤーはすでに、大谷・水原とのやりとりや“真実”について、本書に記していたのだ。