国際情報

中国経済破綻はいつ起きてもおかしくない状況と大前研一氏

 2016年になってから中国経済の不安定性がますます目立っている。いったい、中国経済の将来はどうなるのか、経営コンサルタントの大前研一氏が今後の展望を予測する。

 * * *
 中国経済の変調が著しい。年明け早々、上海株が暴落して株式市場が混乱し、為替相場では人民元安が進んでいる。また、中国税関総署が発表した2015年の貿易統計によると、輸出と輸入を合わせた貿易総額は前年比8%減の3兆9586億4400万ドルで、リーマン・ショックの影響があった2009年以来6年ぶりの減少となった。

 この問題の根本は“コントロール・フリーク(管理しないと気が済まない人)”の中国政府にある。

 まず農民から収奪した土地を工業団地や商業地などに転換して不動産バブルを演出したものの、供給が需要を大きく上回ってマンションやショッピングモールが「鬼城(ゴーストタウン)」だらけになってしまった。そこで習近平政権は投機の受け皿を不動産から株にシフトし、株投資を煽って株高に誘導した。不動産の次は株の官製バブルを演出したのである。

 だが、それは政府がやるべき仕事ではない。株価というのは将来得べかりし企業収益の現在価値である。企業の業績が良くならない限り、株価は上がらないのである。その基本を中国政府は理解せず、株式市場にカネを突っ込んで、なりふり構わぬPKO(株価維持策)を続けた。

 しかし、中国企業の業績は伸びていないから、当然の結果として株価は昨夏から下落し始めた。すると今度は大量保有株主の株式売却を禁止し、違法売買の摘発を強化した。だが、株価が下がっている時に株を売れないことほどストレスとなることはない。そのため、年明けの市場再開と同時に株価は大幅に下落した。
 
 相場の急変時に取引を停止する「サーキットブレーカー」制度を5日間で2回も発動したが、それがまた呼び水となって、さらに株価が下落するという悪循環に陥ってしまった。

 これら一連の動きから、中国政府は資本主義経済を全く理解していないということが露呈したので、いま世界中がある種のパニック状態だ。中国政府はヨーヨーをやっているような感じで上へ下へと経済をコントロールしようとしてきたわけだが、いまやヨーヨーの紐が伸びきってコントロール不能になってしまった。

『週刊ポスト』での本連載では昨年9月25日・10月2日号(第499回)で中国経済大破局を予言したが、その後も事態はさらに悪化し、もはや破綻が起きるか否かが問題ではなく、いつ起きてもおかしくない状況になっている。

※週刊ポスト2016年2月12日号

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン