THAADは高高度迎撃ミサイルシステムで、北朝鮮の弾道ミサイルへの対抗手段だ。しかし中国外相の王毅は、「朝鮮半島問題に乗じて中国の権益を侵すいかなる企てにも断固反対する」と強い口調で配備計画を批判した。やはり、朝鮮半島でアメリカの影響力が増すくらいなら、「悪ガキの火遊び」に目をつぶるほうがマシだと考えているのだ。
その中国は、自らも南シナ海の西沙諸島に地対空ミサイルを配備して、軍事的緊張を高めている。習近平は「南シナ海を軍事拠点にするつもりはない」と繰り返していたが、やっぱり真っ赤なウソだった。
「朝鮮半島の悪ガキ」の暴走も止まらない。北朝鮮は、韓国の制裁に反発して、国境近くにある開城工業団地を閉鎖すると一方的に宣言。しかも、そこに残された韓国側の資産を全面的に凍結すると発表した。その額、約1000億円にのぼる。
開城では、北朝鮮労働者5万4000人の賃金の7割が朝鮮労働党に上納されているという報道があったが、実質的には、全額が金正恩に吸い上げられている。外貨はすべて奪われ、労働者には価値がほとんどない北朝鮮の通貨をわずかと、食料などと引き換えられるバウチャーが渡されるだけだ。
金正恩は人民から吸い上げたカネで贅沢三昧して太る一方、側近を次々に粛清して恐怖政治を強化している。
最近では、朝鮮人民軍総参謀長の李永吉を処刑したとされる。1月まで軍事訓練視察に随行させていた軍の最高幹部を粛清したのだ。
金正恩は、自分のことしか考えない男だ。自らを守るためなら、人民の命も側近の命も何とも思わないのだ。もしアメリカから追い詰められたら、「どうせ俺が死ぬなら」と、国が崩壊することを覚悟で、アメリカだけではなく韓国にも日本にも、そして中国にも核攻撃してくる可能性がある。自分のことしか考えない奴は、自分がやられるなら世界を破滅させてしまおうと考える。そのくらい危険な男なのだ。
※SAPIO2016年4月号