「今回の発言は、つらい思いをしながら最期を看取ろうとしている多くの女性たちの労力をも軽視しています」(水無田さん)
麻生発言の根底には何があるのか。文筆家で立教大学ビジネスデザイン研究所客員教授の平川克美さんは「金です」と断言する。
確かに麻生氏の発言は、1700兆円という個人資産の6割以上を保有する高齢者に消費を促したいという文脈でのものだった。経済状況が必ずしもいいとはいえず、このまま看過できないのは事実だ。
「金が回らないと景気がよくならない。それを高齢者のせいにしているのでしょう」と平川さんは呆れた様子だ。
日本は、世界一長寿な国だ。2015年の日本人の平均寿命は女性が86.8才、男性が80.5才(2016年版・WHO『世界保健統計』より)で、90才を超えて生きることは、さほど特別なことではなくなっている。
「麻生さんの頭の中には、高齢化や少子化が悪いことだという先入観があるのでしょう。しかし、それは間違っています」と前出の平川さんは指摘する。
「少子高齢化に、悪いもいいもありません。少子高齢化の原因は、文明の進歩と経済の発展。これは先進国ならどこででも起きる現象です。問題は、その少子高齢化に合わせた政策がとられていないこと。悪いのは少子高齢化ではなく、無策であることです」
民進党の蓮舫参議院議員もツイッターで、「1700兆円もの個人金融資産の多くを保有する高齢者に『消費』に使ってもらいたいという趣旨は共鳴」しながらも「問題は、どうして『使わない』のか。消費税増税先送りでも社会保障の充実は先送りすべきではない」と投稿した。
※女性セブン2016年7月21日号