演じていて胸に突き刺さったのは、風間俊介さん扮する自分が産んだ子どもとの場面だという。母と息子が罵倒し合うシーンは、愛と憎しみがスクリーンいっぱいに充満した。
「小夜子は、親からも愛されたことのない女だから、ちゃんと人を愛せなくて、お金しか信じなくなったんですね。子どもは邪魔なものと思っているのだけれど、どこかで本能的にかわいいという気持ちはある。具体的な台詞があるわけではないのですが、子どもさえ愛せない寂しさ、微妙な感情を出したかったんです」
大竹さんがチャーミングすぎるので、小夜子は根っからの悪人には見えない。
「人って、絶対悪の人もいないし、絶対正しいという人もいない。人間の持っているいろんな部分が、その時々に出てくるということなのだと思います。もちろん、小夜子は悪女だけど、『子どもが世話しない老人の面倒をみてあげて、お金をもらって何が悪いの?』と強い信念みたいなものがあるんですね。それは、歪んだ信念ですけれど、一部正しく聞こえなくもない。後妻業という仕事もありなんじゃないか、とつい思ったりしちゃいました」
※女性セブン2016年9月8日号