ビジネス

預金の引出手数料 「500~600円でも採算厳しい」と銀行員

なぜ手数料を取られるのか

 多くの人が「理不尽」と感じるのは、銀行口座から預貯金を下ろすだけで発生する「引出手数料」だ。1回0~108円、時間外だと108~216円かかる。

 ソニー銀行が1037人の18歳以上男女を対象に行なった「コンビニATMの利用実態調査」によれば、1年間にコンビニのATM利用で発生する手数料は平均2952円。回答者のおよそ2割は、年間5000円以上の手数料を支払っているという。

 これはコンビニATMだけのデータで、銀行ATMで支払う時間外手数料や振込手数料などは含まれていない。そのため、1年間に支払う手数料が1万円を超える人もザラだという。

 結果、銀行は「手数料ビジネス」で肥え太る一方だ。全国の銀行116行の手数料収入を示す「役務取引等利益」は、2兆3994億円で、銀行の収益(業務粗利益)全体の21.2%を占めている(2015年度・全国銀行協会調べ)。

 メガバンクの普通預金金利は現在0.001%。つまり1000万円を預金しても利息は100円にしかならない計算だ。ATMで自分の口座から1回引き出すだけで「パァ」になってしまう。銀行にとって、これほど濡れ手に粟の商売はない。ある銀行関係者に“不労収入”ではないかと問うと、こう抗弁する。

「ATMの機械を1台導入するだけで約1000万円のコストがかかる。電気代や現金輸送車代、メンテナンス費用なども含めれば、1回当たりの手数料が100~200円では正直なところ赤字、500~600円でも採算は厳しいくらいなんです。ご理解いただかかなくては」

 しかし、金融ジャーナリストの浪川攻氏は、「言い訳に過ぎない」と喝破する。

「銀行のATMは、そもそも人件費削減や顧客拡大という彼らのメリットのために導入が進んだものです。それなのに“営業時間外だから”と手数料を取るのだから、利用者が納得できるわけがない。

 各行のATMを同じ仕様で大量生産してコスト削減を図るなど企業努力の余地は山ほどあるのに、各銀行ほぼ横並びで手数料を徴収しているのだから顧客の不信感が募るのは当然です。

 貸し出しによる金利収入や運用といった“本業”で思うように収入が上げられなくなったため、銀行は『手数料ビジネス』に活路を見出したといわれても仕方ない」

※週刊ポスト2016年9月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン