そんな鶴代に毅然と立ち向かったのは通子…じゃなくて、多衣。「(愛人が奥さんからされたことを)逆恨みするなんて、愛人の風上にもおけやしない!」ひえーっ、パート2。
「おけやしない」って言い回しにシビれますね。そして、愛人の風上ってどこなのかしら?一話に愛人が三人出てくるというハットトリックドラマは初めてみた。しかも、みんなで取っ組み合いになるのかと思ったら、なぜか一致団結して「花ずみ」に発注された「弁当1000個」完成に向けて腕まくりしているのである。
これで丸くおさまるのかと思ったら、別れ話がこじれて前田を刺した千秋が血まみれで店に転がり込んできたり、独身に戻った通子に「僕にもチャンスが巡ってきたのかな」なんてことを言いだした社長(筒井道隆)が怪し気な取引をしていたりと、次々事件が。とにかく平和な時間が一分もないのである。豪華な着物を着こなす観月ありさの堂々の女将ぶりはさすがだが、やっぱり気になるのは、愛人三人。
角川映画のヒロインだった渡辺典子の「人生いろいろありました感」はリアルだし、緒川たまきが鶴代のことを「同類だから…」なんて言う「ひそひそ声」にはゾクゾクする。でもって、烏丸せつこが醸し出すベテランの色気「愛人道」はもはや名人芸。宮藤官九郎の「オールナイトニッポン」では「烏丸せつこ最強説」が語られたが、せつこはその期待を裏切らない。
ウサギ小屋、愛人の風上、同類など、強烈な名セリフも多いこのドラマ。『隠れ菊』どころか、みんな言いたいことをぶつけて、なんでも表沙汰になるところがミソである。