日本が戦争に負けて朝鮮半島が独立した直後、在日の大部分をまとめたのは民団ではなく総連の前身となった組織だった。解放ナショナリズムと日本の左翼運動が合流し、大きなうねりを形成する中、民団は反共を掲げ、日本の保守勢力との関係を密にしていく。

 1965年に日韓の国交が正常化すると、関係はさらに深まる。韓国の軍事政権を後ろ盾とした一部の民団幹部は、国交正常化に伴う「賠償利権」を日韓の間で媒介。両国政財界の癒着構造の中で存在感を強めた。

 しかし今や、日本の保守からの風当たりは、民団に対しても強い。民団は参政権運動や歴史問題の取り組みの中で、リベラルな面を持つようになった。一方で、日本社会の保守化はぐっと進んだ。こうした「ねじれ」を肌で感じているところに、民団の危機感はある。

「ここらで手を打たないと、日韓双方でまったく話が通じなくなってしまうのでないかと心配です」(在日の企業経営者)

 だが韓国人の大多数は、在日の歴史を知りもしなければ関心もないし、だから民団の言うことも本気で聞こうとしない。それどころか少女像にこだわる人々は、慰安婦問題の歴史にもハルモニ(お婆さん)たちの人生にも関心がない。

 そうでないと言うのなら、かつての日韓癒着構造の中、数十年にわたり慰安婦問題を放置してきた、韓国の歴代大統領への批判がほとんどないのはおかしい。いっそ民団は、歴代大統領の墓地の前に少女像を建てる運動でも始めたらどうか。その方がよほど、韓国人の目を覚ますきっかけになるように思えてならない。

【PROFILE】1972年生まれ。朝鮮大学校卒。日本の裏経済、ヤクザ社会に精通。現在は、北朝鮮専門サイト「デイリーNKジャパン」などを足場に、朝鮮半島関連の取材を精力的に行っている。

※SAPIO2017年4月号

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