韓国では、元徴用工らが日本企業を相手取って賠償を求める訴訟がたびたび起こされている。今年3月16日にも、ソウル中央地裁が富山市の機械メーカー・不二越に対し、元徴用工の遺族らに損害賠償を支払うよう命じる判決を出している。
これに対し、日本政府は、日本統治時代の被害や損失について、65年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」という立場で、判決は受け入れられない。
慰安婦問題で謝罪と賠償を求める韓国に日本が反発して両国関係が悪化した経緯を指でなぞるかのような展開となるのではないか。
じつは徴用工像の建設推進委員会に複数いる共同代表のなかには、挺身隊問題対策協議会(挺対協)の尹美香代表の名前がある。すでに述べたとおり、徴用工像の製作者は慰安婦像と同じ夫婦。この設置の動きが第二の慰安婦像問題となり、両国間の大きな火ダネとなるのを懸念するばかりだ。
【PROFILE】竹中明洋●1973年山口県生まれ。北海道大学卒業、東京大学大学院修士課程中退、ロシア・サンクトペテルブルク大学留学。在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者、衆議院議員秘書、『週刊文春』記者などを経てフリーランスに。近著に『沖縄を売った男』。
※SAPIO2017年5月号