そうした国民性を利用して、現在も韓国では日々、反日感情が煽られている。例えば今夏に公開される映画『軍艦島』は史実と異なる点が多く、日本ではすでに問題視されているが、韓国ではこの映画を報道番組が大々的に特集している。血も涙もない日本人がいかに軍艦島(長崎県)で韓国人にひどいことを行ったかを美人キャスターが情緒的に訴える。
こうした状況は、昨年2月、日本兵が韓国人慰安婦を強姦して虐殺するという荒唐無稽なストーリーの映画『鬼郷』が公開された時を彷彿させる。その時はソウル市をはじめ、いくつかの市が「全国民が見るべきだ」として公共ホールを無料で貸し出し、そこに高齢者や小中学生の団体の鑑賞ツアーが殺到した。
こうして反日感情を皮膚感覚で刷り込まれた人々に「慰安婦の強制連行はなかった」などと根拠を示しつつ論理的に反論しても意味がない。彼らは聞く耳を持たず、逆に極めて強い反発がもたらされる。
一方で彼らは国外への発信を怠らない。「日本=悪」というプロパガンダを撒き散らしている。2015年7月に軍艦島が世界遺産に登録された時や同年12月の慰安婦合意の際は、「日本が過ちを認めた」と即座に英語で全世界に発信し、「人権」という“キレイごと”が大好きなヨーロッパ諸国はこの見解を容易に受け入れた。
国内外で「日本=悪」の既成事実化を進める韓国に対し、日本の反応はあまりに鈍い。私は自著を英訳して英語圏で販売するためにいろいろと調べたが、日本からの英語発信は驚くほど少なく、販売ルートも乏しかった。これでは韓国の一方的な主張が歴史における「真実」となってしまう。
●オ・ソンファ/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。『「反日韓国」の苦悩』(PHP研究所)、『朴槿恵の真実』、『侮日論』(いずれも文春新書)など著書多数。
※SAPIO2017年5月号