もうひとつ、このドラマの魅力になっているのがセリフ。

「恋と秘密って似てるね。隠したくても隠しきれないところが」
「誰かと一緒に生きてくってことは、リスクがあるんだ」
「自分に都合のいいように真実をゆがめるのが人間」

 心の中にぼおっと浮かんでいる曖昧なことについて、警句や格言のごとく短くずばりと言い切るセリフが散りばめられています。

 加えて、キーになるのがイタリアオペラの響き。父親を殺した時に流れていた曲「トゥーランドット」が、物語を進めていく鍵の一つとして使われています。

 印象的なオペラのメロディが耳に入るとたちまち黎は殺害現場を思い出してしまい、脂汗が流れる。つい、秘密を漏らしてしまいそうに動揺して……謎を生む謎。鋭い言葉。効果的に使われる音楽。わかりやすい説明は、むしろいらない。配置されたアイテムが、ドラマ世界をより深い謎へとひっぱっていく。

 もう一つ、指摘したいのが福士蒼汰さんの押し殺した表情。ドラマの中でこれが非常に活きています。これまで仏頂面とか表情が足りない、などと指摘されたこともありましたがそうではない。むしろ、内省的で繊細。秘密を抱えた人の葛藤と暗さが伝わってくる。この作品で福士さんは「複雑な人物を演じる力の可能性」を示したように思います。

 一方、川口春奈さんの躍動感、イキイキした雰囲気も、福士さんとの意図された対照的な配置となって陰影を作り出しています。演出の腕に唸らされます。

 ドラマのコンセプトは「恋人のことをどれくらい知っていますか」。企画・原案は秋元康氏だけに、一筋縄ではいかない老獪さ。悔しいけれど、視聴者の意識はどんどん追い込まれていく。引きずられていく。謎を深める筋立て、切れたセリフ、巧みな音、陰影を見せる演技、あざとい演出……後半ますます目が離せません。

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
イメージカット
「有名人なりすまし広告」の類に“騙されやすい度”をチェックしてみよう
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン