芸能

福士蒼汰『愛してたって、秘密はある。』の何が凄いのか

番組公式HPより

 ネットの普及により、古今東西あらゆる類のコンテンツが身近になった。その事実は、ドラマ制作の手法にも確実に変化をもたらしている。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 夏ドラマの中でも独特な快走ぶりを見せ、目が離せない作品があります。『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系日曜22時30分)。物語はすでに第5話、つまり折り返し地点まで進んでいます。それなのに……。何が凄いと言って、極端に言えば「たった1つのこと」しかわかっていない。それが凄い。

 その1つのこととは…「奥森黎は、実父を殺し自宅の庭に埋め、父の車を海に沈めた」。それだけ。

 物語の筋は……福士蒼汰演じる主人公・奥森黎は、母の晶子(鈴木保奈美)に暴力を振るう父の姿を目撃し、母を守ろうととっさに手近にあったトロフィーで父の頭を殴り殺害してしまう。それ以後2人は「父は失踪した」ということにし、「秘密」を守って生きてきた。

 まずは第1話冒頭、はっきりと「犯行シーン」が示されました。犯罪を犯し隠蔽する母と子。事件の構造は単純です。しかし、回が進んでいろいろな出来事が起こっても理由や原因が何だかわからない。

 ある日突然、凶器に使ったトロフィーが、黎の恋人・爽(川口春奈)の元に送りつけられたり。差出人不明のメールに、「土の中 海の底 かくれんぼは、もう終わりだ」などと事件の核心が記されていたり。恋人のために購入した婚約指輪が、なぜか死んだ父がしていた結婚指輪にすり替わっていたり。

 つまり、「秘密」を知る誰かがたしかにいるのです。その誰かから次々に不気味なメッセージが送りつけられてくる。しかし、謎が膨らむばかりで誰の仕業かわからない。目を皿のようにしてテレビを見ている視聴者でさえ、その「黒幕」とはいったい誰なのか、見当がつかない。

 推理ドラマといえばたいていの場合、「この人が怪しい」という容疑者が数人現れ、だんだんに犯人が絞られていくのが常套手段。しかし、『愛してたって、秘密はある。』はタイトル通り、すべての人がそれぞれ秘密らしきものを抱えている。すべての人が怪しい匂いを漂わせている。

 川口春奈が演じる、元気で明るい司法修習生・爽にさえ、恋人の黎に隠している「秘密がある」という設定です。

 登場人物の中から「黒幕」を探し出そうとすると、対象になる人は言ってみれば全員。今話題の不倫ニュースばりにいえば「全員がオフホワイト」になってしまう。この人もあの人も黒幕でありそうでなさそうで。なんだか幻惑されてクラクラするあたり、ドラマ世界に閉じ込められてしまった証し。

関連記事

トピックス

直面する新たな課題に宮内庁はどう対応するのか(写真/共同通信社)
《応募条件に「愛子さまが好きな方」》秋篠宮一家を批判する「皇室動画編集バイト」が求人サイトに多数掲載 直面する新しい課題に、宮内庁に求められる早急な対応
週刊ポスト
ポストシーズンに臨んでいる大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ポストシーズンで自宅の“警戒レベル”が上昇中 有名選手の留守宅が狙われる強盗事件が続出 遠征時には警備員を増員、パトカーが出動するなど地元警察と連携 
女性セブン
「週刊文春」の報道により小泉進次郎(時事通信フォト)
《小泉進次郎にステマ疑惑、勝手に離党騒動…》「出馬を取りやめたほうがいい」永田町から噴出する“進次郎おろし”と、小泉陣営の“ズレた問題意識”「そもそも緩い党員制度に問題ある」
NEWSポストセブン
懲役5年が言い渡されたハッシー
《人気棋士ハッシーに懲役5年判決》何度も「殺してやる」と呟き…元妻が証言した“クワで襲われた一部始終”「今も殺される夢を見る」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(左)、田淵幸一氏の「黄金バッテリー」対談
【江夏豊×田淵幸一「黄金バッテリー」対談】独走Vの藤川阪神について語り合う「1985年の日本一との違い」「短期決戦の戦い方」
週刊ポスト
浅香光代さんの稽古場に異変が…
《浅香光代さんの浅草豪邸から内縁夫(91)が姿を消して…》“ミッチー・サッチー騒動”発端となった稽古場が「オフィスルーム」に様変わりしていた
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
【前橋市長のモテすぎ素顔】「ドデカいタケノコもって笑顔ふりまく市長なんて他にいない」「彼女を誰が車で送るかで小競り合い」高齢者まで“メロメロ”にする小川市長の“魅力伝説”
NEWSポストセブン
関係者が語る真美子さんの「意外なドラテク」(getty image/共同通信)
《ポルシェを慣れた手つきで…》真美子さんが大谷翔平を隣に乗せて帰宅、「奥さんが運転というのは珍しい」関係者が語った“意外なドライビングテクニック”
NEWSポストセブン
部下の既婚男性と複数回にわたってラブホテルを訪れていた小川晶市長(写真/共同通信社)
《部下とラブホ通い》前橋市・小川晶市長、県議時代は“前橋の長澤まさみ”と呼ばれ人気 結婚にはまったく興味がなくても「親密なパートナーは常にいる」という素顔 
女性セブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人の時効が消滅》「死ぬ間際まで與一を心配していました」重要指名手配犯・八田與一容疑者の“最大の味方”が逝去 祖母があらためて訴えた“事件の酌量”
NEWSポストセブン
男性部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長
「青空ジップラインからのラブホ」「ラブホからの灯籠流し」前橋・42歳女性市長、公務のスキマにラブホ利用の“過密スケジュール”
NEWSポストセブン
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したという坂口
《お相手は59歳会社員》坂口杏里、再婚は「ゼロ日」で…「ガルバの客として来てくれた」「専業主婦になりました」本人が語った「子供が欲しい」の真意
NEWSポストセブン