佐藤:あれは反知性主義の選挙でもあった。郵便局は1円も税金を使っていない組織でした。郵便事業は赤字でしたが、簡保と郵貯でまかなっていたんです。職員の給与も税金から支払われていたわけではなかった。小泉さんは国家に実害がない郵便局を官営から民営にすることで、小さな政府を実現させるんだと国民に思い込ませた。まったく関係のない問題を結びつけて、選挙に勝ってしまった。
片山:最大の問題は、小泉首相が確立した劇場型政治がいまも続き、社会そのものが破壊されたことです。かつて日本の社会は、よくも悪くも地域組織や労働組合や職能団体などの中間団体に支えられていた。しかしいまは宗教団体を除いては中間団体が弱体化し、一人一人の人間がバラバラにアトム化してしまった。その結果、連帯が弱まり、社会に不安が広がっている。
佐藤:ヨーロッパの中堅国ならいつ崩壊してもおかしくない状態ですからね。でも逆説的に言えば、日本の底力が証明されている。
片山:確かに。この状態で社会秩序を維持しているし、GDPも世界3位。この国はすごい(苦笑)。
佐藤:この時期、小泉政権が推進した新自由主義の影響で、非正規雇用が増加して社会問題になりました。一方では「格差の何が悪い」と言い切るライブドアの堀江貴文さんに代表される富裕層も現れた。彼は郵政選挙にも出馬しましたが、2006年1月に証券取引法違反で逮捕されてしまった【※注2】。
【※注2/堀江氏らの逮捕後、上場廃止。社名変更や子会社化を経て、ライブドア社は消滅。ポータルサイトはLINE社に引き継がれた】