閉じこもりっぱなしで気持ちも塞ぎます。その時もまたある男性のことを思い出しました。数年前に一度だけ会った歌舞伎町のホストのB。一度思い出したらもう、いてもたってもいられない。Aさんに「東京でどうしても進めなければならない仕事がある」と説明しました。すると彼は500万円の現金をポンと渡してくれたのです。私はこれを持ってすぐにBに会いに行きました。
Bはまだ同じ店で働いていて、向こうも私を覚えていた。嬉しくて、Aさんからもらった500万円を3日で使い切ってしまいました。熊本に帰って1週間もすると、Bに会いたくてたまらなくなる。Aさんには仕事だと説明し、また500万円をもらうとその足で空港に行き、歌舞伎町に直行します。
都内の高級ホテルでBに優しくしてもらう。チップは金の入った封筒から手掴みです。500万円なんてすぐになくなる。そのたびにAさんに電話し、追加のお金を送らせました。積み上がったお金は4500万円以上になります。
ただ、破滅はすぐにやってきました。2015年のクリスマス、AさんにBのことを知られ大げんかになったのです。私はAさんが用意してくれたケーキを彼の顔に押しつけて部屋を飛び出しました。
そして年が明けた2016年1月、私はなけなしの50万円を握ってタイのバンコクに逃亡したのです。その地で、私は運命の出会いをします。バンコクのレストランで若い男性のCに「日本人ですか」と声をかけられたのです。日本のことを勉強したいという元ボクサーで、31才だと言っていました。
183cmの長身で、体の引き締まったイケメン。毎日ワット(寺院)に通う敬虔な仏教徒です。
ほんの数日で、私とCは恋に落ちました。結婚の約束をして、彼の家族が参加する披露宴まで挙げました。タイではCが私を養ってくれた。お金を持っていない私のことを心から受け入れてくれた男性は、彼が初めてです。
何年後になるかわかりませんが、刑期を終えたらラオスに行きます。犯した罪のこともあり、タイには入国できない。ラオスにCを呼び寄せて一緒に暮らすつもりです。
──アクリル板の向こうで背筋を伸ばし途切れることなく質問に答える山辺被告。Cについて話す時は少女のように涙を見せた。別れ際、彼女は記者に向かってこう言った。
「こんな私を笑いますか? でも、本気なのです。私はいつまでも男を愛し、また愛される女性でいたいのです」
※女性セブン2018年4月19日号