「人権問題もありますから、前科者の情報を国民全体に開示するのは難しいかもしれません。でも、せめて警察や行政は危険人物の行動を常に監視できる体制にあってほしい。再犯に次ぐ再犯をするような、遵法精神を欠いた人間に対しては、やはり地域住人でも情報共有できるよう法律を整える必要があると思います。
そうした具体的対策なしに、理想論だけを述べられても、もう立ち行かない時代に来ていると思うのです。私の娘のように、“誰でもいいから人を殺してみたい”という殺意を向けられた時、黙って殺されろというのでしょうか…。
池田小の事件のように、今では学校の中でさえ安全とはいえません。校内に防具を設置するなどの対策も必要だと思います」
凶悪犯罪に詳しいジャーナリストの大谷昭宏さんも、孝史さんの言葉に同意する。
「子供に対する性犯罪者に関しては、再犯率の高さも指摘されており、出所後の犯人にGPS(全地球測位システム)を取り付ける議論を進めるべきです。諸外国ではすでに適用している国もあり、米国のテキサス州では、『このまま刑務所にいるか、釈放する代わりにGPSを付けるか、自分の車に“性犯罪者です”との貼り紙をするか』などのさまざまな選択肢から選ばせている。もちろん犯罪者の人権は大切ですが、無辜の子供たちの人権と凶悪犯の人権を同等に考える必要はありません」
大谷さんの指摘通り、米国や英国、フランスなどは特定の犯罪者にGPSの取り付けを義務付けている。
なかでも特徴的なのは韓国だ。複数の性犯罪前科がある出所者にGPS機能のついた足輪を装着させ、居住地から半径2kmの監視範囲の外に出たり、指定された制限区域に立ち入ると保護観察所に報告される監視制度が2008年にスタートした。
現在は未成年者誘拐や殺人、強盗などの前科にまで適用範囲を拡大し、足輪を装着する期間も当初の最長5年から30年まで延長された。特筆すべきは再犯率の変化で、制度施行前14.1%だった再犯率は、施行後1.7%まで激減した。
世界各国で性犯罪から誘拐、殺人、強盗まで幅広く成果が出ているGPSだが、日本では「犯罪者の人権」を主な理由として議論が進まない。
2012年に大阪府が18才未満の子供への性犯罪前科者には住所の届け出を義務付けたが、以降、全国には広がっていないのが現実だ。
※女性セブン2018年7月12日号