筆者が関係者に聞き取りを続けたところ、この若者たちは地元の“半グレグループ”であり、彼らをまとめるのは、地元出身で関西地方の広域指定暴力団に所属していたが、トラブルを起こしUターンしてきたという男(40代)であることが判明した。
男は元々不良少年でもなく、地元暴力団に所属していた経歴もない。ただ、同級生など近しい人々によれば、あまりにも身勝手で、友人と呼べる人はいなかった。地元に居場所がなかった男は、都会に出てヤクザになり凱旋したかと思えば、自身が”暴力団ではない”のをいいことに、10も20も年下の子供や若者をそそのかし、半グレ集団を組織し、やりたい放題にやっている、という実情なのだ。
「奴らは“自分は元××組の○○さんと知り合い”と吹きまくって、肩で風を切って街を歩いている。彼らは暴力団じゃないと、警察も手出しが出来んようです」(正木さん)
実は同じような事例は、すでに都市部では数年前から起きていた。それが年月を経て、地方でも同様の事態になっているのではないか。神奈川県内に本部を置く、広域指定暴力団の元幹部・A氏(50代)が指摘する。
「暴力団が条例やらで規制されて、一時期は暴力団より半グレが強いのではないか、というような時期がありました。東日本大震災の頃です。東京や大阪でその頃に半グレメンバーになっている、もしくは半グレを経て暴力団になり、その後に地元に帰った連中が、いま全国各地で”暴力団の代わり”みたいなことをやっているようです。田舎のおまわりも、不良少年やヤクザなら対処方法もわかるでしょうが、相手が“半グレ”となるとね…。どうしようもできないのでしょう」(A氏)
筆者が聞き取りをしたところ、同じような事態は九州の中小都市のほかにも、山陰地方、東北地方日本海側、そして北海道道東でも発生している。暴力団がいなくなった場所にボウフラのごとく沸きあがりやりたい放題、好き放題で地域住民に迷惑をかける。半グレだから手が出せない、取り締まるための法律が未整備という当局、法律の隙をついた卑劣さは、暴力団以上ともいえるのかもしれない。加えて彼らには、地域を思う、先輩や高齢者を敬うといった感情が欠如している。義理人情など知ったことではなく、ただ自分たちだけが良ければ良いのだ。こうした地方の“半グレ”達に、みな戦々恐々としているのだ。