山梨はハレの日にまぐろを食べる習慣あり

 山梨県の県庁所在地・甲府市の消費データにも注目したい。戦国時代の名将・武田信玄は京の都だけでなく、甲斐の国にはない海にも憧れを抱いていたという。

 そんな海なし県にもかかわらず、まぐろの支出金額、購入数量が例年全国トップクラスなのである。2017─2019年平均は9040円で、静岡市の1万2305円に次いで全国2位。購入数量も同様だ。2020年は9614円でこれまた静岡市の1万1897円に次ぐ2位となっている。

まぐろの支出額・購入量が全国トップクラスの山梨

まぐろの支出額・購入量が全国トップクラスの山梨

 実は、すし(外食)の支出額も、2017─2019年平均は4位、2020年は若干順位は下がったが7位と全国トップクラスなのである。

「山梨には中世以降、駿河の国からの街道・中道往還を通じて魚介類が馬の背で運ばれていました。まぐろもそのひとつです。甲斐の国は海の生魚を運ぶ限界、魚尻点だったのです。江戸時代、幕府直轄領となった甲府には多くの勤番士が江戸から赴任しましたが、彼らが江戸で馴染んでいたすしを求めたことからすし文化が広まりました。

 今でも、ハレに日にはまぐろやすしを食べる習慣が根付いています。また、山梨には無尽という仲間内の会合(元々は相互扶助の民間金融制度)があり、その会食がすし屋で行われることも多く、まぐろやすしが人気の背景にはこうした歴史的な経緯があるのです」(地元関係者)

 甲府のまぐろ・すし支出にもコロナ禍の影響が見受けられる。外食のすしの支出額が前年に比べ4000円あまりダウンした一方、家庭で食べるまぐろの支出額は958円増加しているのだ。外出自粛の影響だろう。

 数字がズラッと並ぶ「家計調査」という政府統計を細かく分析してその背景を探ると、さまざまな文化や歴史、ドラマが見えてくる。この調査は食べ物関連だけでなく、住居、自動車、小遣いなど生活関連も網羅している。興味のある方は、その不思議な世界を探訪してみてはいかがか。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン