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メダル獲得の期待がかかる競泳女子リレーチーム。左から五十嵐千尋選手、池江選手、酒井夏海選手、大本里佳選手(写真/時事通信社)

 そこに追い打ちをかけたのが、新型コロナの感染拡大だ。昨年4月から5月にかけて緊急事態宣言が発出され、その間は感染リスクを考慮して、再びプールから離れざるを得なかった。

 しかし、度重なる困難も彼女は凄絶な努力で乗り越えた。昨年8月に約1年7か月ぶりにレース復帰すると、次々に好成績を記録していく。そして今年4月4日、東京五輪代表選考会を兼ねた日本選手権で見事優勝を果たし、五輪代表(リレーメンバー)の切符を勝ち取ったのだ。池江選手の復活劇は「奇跡」と称され、日本はもとより、世界中に大きな感動をもたらした。

血液がん患者は50%しか抗体ができない

 そもそも池江選手は東京五輪を諦め、2024年のパリ五輪に照準を定めたはずだった。それが新型コロナの影響で東京五輪が延期。その結果、なんとか出場に間に合った。そうした経緯もあり、池江選手は以前にも増して東京五輪の象徴的存在と見られるように。感染拡大が収まらない中での五輪開催をめぐり、世間で「中止論」が取り沙汰されると、池江選手のSNSには「五輪を辞退してほしい」「反対の声を上げてほしい」といった声が寄せられた。

 それを受け池江選手は5月7日、自身のツイッターを更新し《私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません。ただ今やるべきことを全うし、応援していただいている方達の期待に応えたい一心で、日々の練習をしています》と反応している。そしてこの投稿の中で、《持病を持ってる私も、開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています》と、新型コロナに対する不安な胸の内も明かしたのだ。

 池江選手は、持病、つまり白血病を克服したと思われているが、この告白で、彼女が日々恐怖と闘っていることが明らかになった。医療ガバナンス研究所理事長で、血液・腫瘍内科が専門の上昌広さんが言う。

「新型コロナワクチンを接種して体内に『抗体』を作るためには、白血球の一部である『リンパ球』の働きが必要です。しかし白血病などの血液がんの患者は、白血球に異常が起きていてリンパ球が正常に働かない。そのため、抗体が産生されにくくなります。

 ファイザー社製ワクチンに関する報告によれば、『健康的な成人は2回の接種を終えれば95%の感染を予防する』というデータがありますが、がん患者ではそうはいきません。特に、免疫力が低下する血液がんの患者の場合は、その傾向が顕著です。2回打っても半数くらいしか抗体が産生されないでしょう」

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