15年ほど前に流行ったエクササイズビデオ『ビリーズブートキャンプ』を紹介するシーンでは、「私も入隊したけれど、ビデオの中でビリーさんがひとりの女性ばかりに指導するのが気になって、早々に脱走した」とか、「3年前にビリーさんから個人レッスンを受けたときはすごく優しくてチャーミングで思わず触らせていただいちゃった!」などと、勢いをつけてペラペラ。
ところが、本番中の私の顔を録画した映像を後から見たら、緊張を隠すために一生懸命笑っていたつもりだったのに、まぁ、その目が怖いのなんの。
それと比べて、というのもおこがましいけれど、博多華丸・大吉さんや友近さんの話芸と温かいまなざしは、いま思い出しても胸が温かくなる。
友近さんは楽屋にご挨拶に伺ったらまったく同じトーンの紫色のブラウスを着ていて、こちらは大慌て。「どうしましょう!?」と言うと、「あ、私はかまわないですよ」とサラリと言ってくださった。
続いて大吉さんの楽屋にご挨拶に行ったらメイク中。そしたら、「座ったままで失礼します。本日はよろしくお願いします」と、こうおっしゃったのよ。どこの馬の骨かわからない私に!
それにしても、『あさイチ』に毎日出演している鈴木奈穂子アナはどうしてあんなに自然な笑顔でいられるのか。私にさまざまな質問を投げかけてくれた進行役の石井アナもそうよ。前日に簡単な打ち合わせというかリハーサルをしたのだけど、テンパって勝手なことを言い出した私を上手に軌道修正してくださったことが何度もあったの。それからフロアディレクターさんの場づくり、空気づくりの見事さといったら……ああ、とても話し切れないわ。
そんなこんなを65才で体験した私。
ホント、何でも体験してみないとわからないものだけど、『あさイチ』に出演してあらためて、人っていいもんだなと思った。小学生時代の恩師の言葉じゃないけれど、長く生きて初めてわかることって、きっとまだまだありそうだね。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2022年10月20日号