斎藤佑樹(元北海道日本ハム)、大石達也(元埼玉西武)と三本柱を形成し、いずれもドラフト1位でプロの世界へ。だが、同期の桜はいずれも引退。福井もここ3年間は勝ち星に恵まれていない。
「若い時には腕を一生懸命に振って投げるだけだった。最近はこういうボールを投げたら抑えられるとか、打者との駆け引きがわかってきた。そういうのが早い段階から身につけられる選手が突き抜けた選手になっていくんでしょうが、僕は12年かかってようやくですね」
それでも戦力外通告を受け、10月はトライアウトに備えて仙台で個人練習を重ねた。トライアウト前日には斎藤から激励の連絡もあった。そして迎えた運命の日、打者3人を無安打に抑え、直球でファウルを、フォークで空振りを奪う福井らしい投球は披露できた。
しかし、NPBの球団からの連絡はなかった。
「今後に関してはまだ考えられていない。NPB以外の独立などで野球を続けるかも、これからですね。1年目(2011年4月)に2番目の兄が亡くなり、オヤジも(2013年に)亡くなった。色々なことがありましたが、12年はあっという間でした」
2014年には済美時代の上甲正典監督、今年9月には早稲田大時代の應武篤良監督の訃報に接した。
「もっと色々と相談したかったですね……」
肉親や恩師との突然の別れを乗り越えてきたからこそ、体が元気で白球が投げられるうちはマウンドに上がり続けたい。わざわざ言葉にしなくとも、福井が現役にこだわる理由が少しだけ理解できた気がした。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/1976年、宮崎県生まれ。ノンフィクションライター。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『永遠のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。近著に『甲子園と令和の怪物』(小学館新書)
※週刊ポスト2022年12月2日号