最長政権を築いた安倍晋三首相の退任会見。2020年9月(撮影:小川裕夫)

最長政権を築いた安倍晋三首相の退任会見。2020年9月(撮影:小川裕夫)

 駆け足ではあるが、2022年に物故した政治家3人の横顔を紹介した。改めて3人の政治家を振り返ってみると、ともに政治で大きな挫折を経験した共通点がある。

 安倍元首相は、2006年に発足した第1次政権が短命に終わるなど辛酸を舐めた。それを糧にして2012年からの第2次以降で政権の安定運営に努めた。1975年の都知事選で美濃部亮吉都知事に敗北した石原候補は、1999年の都知事選で雪辱を果たした。そして、強い都知事像を確立していく。スキャンダルの影響で1995年の参院選で落選したアントニオ猪木議員は、2013年に再び政界へと戻った。そして、改めて存在感を発揮した。

 政治家がスキャンダルで信頼を失墜させることは珍しくない。近年は一度でもスキャンダルを起こすと、政治生命が絶たれるとも言われる。また、過去のスキャンダルをほじくり返されることも珍しくない。

 しかし、実際は政治家が挫折感で気力を喪失しているだけに過ぎない。政治家が気力を喪失してしまうのは、さまざまな理由があるだろう。ただ、根本的な理由として政治家としての気概や使命感が不足していることがあるとは感じる。何が何でも政治家になって、社会を変えたい。そんな強い気持ちがなければ、政治家は務まらない。

 職業として政治家を目指すと、「儲からないから」「割に合わないから」「批判ばかりされるから」といった理由で政治家を辞めてしまいがちだ。いったん政治家を経験すれば箔がつく。有権者から、転職するためのキャリアアップの一手段と受け止められても仕方ないだろう。

 職業として政治家を選択する人が増えたのも、時代の流れかもしれない。好意的に受け止めれば、職業としての政治家だったら業界との癒着や多選による弊害は起きない。そんなメリットも考えられる。

 だが、時代遅れと言われようとも、気概と使命感にあふれる政治家もいてほしいと考えることは決して贅沢な願望ではない。気概と使命感にあふれた政治家を待ち望みたい。

ディーゼル車規制や東京の森づくりといった環境政策にも熱心だった石原慎太郎元都知事(撮影:小川裕夫)

ディーゼル車規制や東京の森づくりといった環境政策にも熱心だった石原慎太郎元都知事(撮影:小川裕夫)

2013年の参院選に当選し、国政復帰したアントニオ猪木議員の登庁風景(撮影:小川裕夫)

2013年の参院選に当選し、国政復帰したアントニオ猪木議員の登庁風景(撮影:小川裕夫)

関連記事

トピックス

真美子夫人は「エリー・タハリ」のスーツを着用
大谷翔平、チャリティーイベントでのファッションが物議 オーバーサイズのスーツ着用で評価は散々、“ダサい”イメージ定着の危機
女性セブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン
社会人になられて初めて御料牧場でご静養された愛子さま(写真/JMPA)
愛子さま、社会人になられて初めて御料牧場でご静養 “新天地”でのお疲れを癒されて
女性セブン
氷川きよしが独立
《真相スクープ》氷川きよしが事務所退所&活動再開 “独立金”3億円を払ってでも再出発したかった強い思い
女性セブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者(51)。ストーカー規制法違反容疑の前科もあるという
《新宿タワマン刺殺事件》「助けて!」18階まで届いた女性の叫び声「カネ返せ、カネの問題だろ」無慈悲に刺し続けたストーカー男は愛車1500万円以上を売却していた
NEWSポストセブン
大越健介氏が新作について語る(撮影/村井香)
『報ステ』キャスター・大越健介氏インタビュー「悩んだり、堂々巡りする姿を見せることもキャスターの仕事の1つだと思っています」
週刊ポスト
5月8日、報道を受けて、取材に応じる日本維新の会の中条きよし参議院議員(時事通信フォト)
「高利貸し」疑惑に反論の中条きよし議員 「金利60%で1000万円」契約書が物語る“義理人情”とは思えない貸し付けの実態
NEWSポストセブン
宮沢りえの恩師・唐十郎さん
【哀悼秘話】宮沢りえ、恩師・唐十郎さんへの熱い追悼メッセージ 唐さんの作品との出会いは「人生最高の宝物」 30年にわたる“芸の交流”
女性セブン
殺害された宝島さん夫婦の長女内縁関係にある関根容疑者(時事通信フォト)
【むかつくっすよ】那須2遺体の首謀者・関根誠端容疑者 近隣ともトラブル「殴っておけば…」 長女内縁の夫が被害夫婦に近づいた理由
NEWSポストセブン
初となる「頂上鼎談」がついに実現!(右から江夏豊、田淵幸一、掛布雅之)
【江夏豊×田淵幸一×掛布雅之の初鼎談】ライバルたちが見た長嶋茂雄秘話「俺のミットを“カンニング”するんだよ」「バッターボックスから出てるんだよ」
週刊ポスト
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
曙と真剣交際していたが婚約破棄になった相原勇
《曙さん訃報後ブログ更新が途絶えて》元婚約者・相原勇、沈黙の背景に「わたしの人生を生きる」7年前の“電撃和解”
NEWSポストセブン