そして、平成期には菅野美穂、浅野ゆう子、安達祐実らによる平成版『大奥』が登場。奥女中たちは、化粧箱にもアクセサリーにも布団にも毒を隠す。大奥は毒殺天国!?とびっくりだった。
放送中の男女逆転『大奥』は、多くの賞に輝いたよしながふみの漫画が原作。過去にも映画・ドラマ化されている。その魅力は、奇抜な設定ながら、史実を踏襲し、その時代を映し出していること。幕府の財政難のため、吉宗は見目麗しい者たちを大奥から去らせる。ドラマでは、家光の主治医を刺し殺し、有功の供の僧を殺させて大奥入りを迫った(←これは史実ではないにしても)春日局が、命がけで家光に尽くしたことはよく知られているし、お万が大奥で生きたことも史実だ。
秘密と痛みを抱える人間たちが、閉じ込められた世界で誰かを愛する。今回の『大奥』には、切なさとともに、一本筋を通す折り目正しさ、清潔感がある。この後、仲里依紗、山本耕史の「五代将軍綱吉・右衛門佐編」でも、この姿勢は続くのか。思いっきりドロッとくるのか。きりりとした富永吉宗が、“生類憐みの令”で知られる綱吉をどう評するのかも楽しみだ。