日本テレビ以外はどうだったかというと、なんとか世帯視聴率の数字を確保しようと、チャンネル権を握る高齢者向けの番組ばかりを量産していた。いま中高年向けの番組が激減しているのは、これまでの揺り戻しといっていい。
テレビライターの戸部田誠さんがそれに続く。
「ただ、これまで中高年偏重だった分、急に若者向けといわれて、まだ掴めていない印象はありますね。『アウト×デラックス』(フジテレビ・2013〜2022年)でマツコ・デラックスさんが、上沼恵美子さんがテレビから追いやられたことについて『年齢がいった演者だからって若い人が面白がらないことはない』と言っていましたが、その通りだと思います。世帯視聴率だけが評価基準だった状況からやっと脱却できたのだから、いまこそいろいろな評価軸で多様な層に向けた番組作りをすべきでは」
「楽しくなければテレビじゃない」をモットーに、1982年から2012年もの間視聴率三冠王に君臨していたフジテレビの牙城を崩したのが、1994〜2003年の日本テレビだ。この間、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』(日本テレビ・1989年〜放送中)や『進め!電波少年』(日本テレビ・1992〜1998年)、『恋のから騒ぎ』(日本テレビ・1994〜2011年)、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日本テレビ・1996〜2002年)など人気芸人が活躍するバラエティーが数多く芽吹き、開花した。
テレビ離れの原因は思考停止コンテンツ!?
前出の境さんは、テレビ離れの深刻ぶりを「放送業界史上最悪の危機」と評した。
「2019年度と2022年度の上半期を比較しただけでも、放送収入は272億円下がり、視聴率は3.2%低下しています。これまでテレビ視聴者の主役だった高齢層もYouTubeやNetflixなどに流れていると考えられます。
その原因は、コンテンツの弱さ、という一言に尽きる。いまはどのチャンネルにしても、サンドウィッチマンやかまいたちみたいな、ちょっと数字がいい芸人がクイズとか散歩とか、みな同じような番組に出ていて、さっきまで何見てたっけ?ってなる。テレビの作り手はもっともっと考えないと、テレビ離れを止めることは難しい」(境さん)
「コンテンツ力より、ハード面の遅れに原因がある」と話すのは、戸部田さん。
「現状でも優良コンテンツ番組は少なくないと思います。けれどそれは、他ジャンルのエンタメもそうであるようにごく一部。無数にある作品の中から自分の興味があるものを探して見られればいいんですが、いざ探そうにも検索しづらく、見つけてももう見れないということが多い。いまでこそTVerなどの見逃し配信が普及しつつありますが、現状だって、ほかのサービスと比べると不便だと言わざるを得ません。ハード面の不便さがコンテンツ自体まで古い、遅れているというイメージにつながっている気がします」(戸部田さん)