そして2023年2月1日、それを裏づけるような「原状回復」トラブルに関する注意が『賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意』としてリーフレットおよびサイトで国民生活センターから呼びかけられた。「賃貸住宅から退去するときの原状回復費用の負担に関するトラブルが起きています」、まるで時代が戻ったかのよう。近年は再び「原状回復」トラブルが目立ち、3万件以上の賃貸に関する消費生活相談の約半分が「原状回復」に関する相談だという。国民生活センターは実際の事例として、
【事例1】
敷金礼金不要のアパートを退去したら、契約書の記載と異なるエアコン清掃代や入居前からあったフローリングのキズの修繕費用まで請求された。
【事例2】
アパートを退去した際、自分では通常損耗だと思う箇所の修繕費用や、契約書に記載のない費用を請求され納得できない。
【事例3】
20年以上住んだマンションを退去した際、入居時から付いていたキズについて「最近付いたものだ」として修繕費用を請求された。
【事例4】
敷金礼金不要のアパートを退去した際にシャワーヘッドの交換費用を請求され、入居時から不具合があったと伝えたが証拠がないと言われた。
といった相談内容を公開している。まんま四半世紀前、1990年代から変わっていない現実だ。法もガイドラインも整備されたはずなのに。
ワンルーム余りとコロナ禍
「国が注意するのも当然です。普通に使っていた分には、原状回復の義務ないんですから」
彼の言う事はもっともだが、それなのになぜこのような実態があるのか。元賃貸不動産のベテラン営業マンに話を聞いた。
「まず1980年代から1990年代にかけてワンルームマンションを作りすぎました。団塊ジュニアの若者の進学や上京に合わせて繁盛したわけですが、少子化と地元回帰で一気に供給過多となりました」
この話は「東京近郊に限る」というエクスキューズがついている。しかしワンルームが余っているのはいまに始まった話ではないはずだ。
「コロナ禍もあると思います。上京せずに地元に残る若者がさらに増えた。ただでさえ子どもが少ないわけですからワンルームは余ります」