南海トラフの前兆も
長尾氏はさらにこの先、「要警戒」として注視しているエリアを予測。その中で長尾氏が「最も危険」とし、引き続き警戒を呼び掛けるのが「能登半島・上越沖エリア」だ。
「今回の地震では、能登半島先端の北東沖から南西方向に延びる約150kmの巨大活断層が一気に動きましたが、その割れ残りが2か所見つかっています。一つは能登中部エリア。本震後、ここを震源とする余震がほとんど観測されていません」
能登半島北東部沖から新潟県佐渡島付近にかけての上越沖エリアも“地震空白域”であり、最新の地下天気図でも活発化異常が出ている。「いずれもM6規模の地震が起こる可能性がある」との長尾氏の指摘どおり、取材後の1月9日には佐渡付近を震源とするM6の地震が発生した。
地下天気図では、能登から離れた地域にも異常が認められている。和歌山県と徳島県に囲まれる海域「紀伊水道エリア」は、2022年5月頃から活発化が続いている。
「このエリアでは、M7規模にもかかわらず、身体に感じないほど揺れが遅い“スロースリップ型”の地震が2018年に起きたことがわかっています。中長期的に見れば、南海トラフ地震の前触れとして警戒すべきエリアであることは間違いありません」
南海トラフ地震は、国の調査委員会が「M8から9クラスの地震が30年以内に発生する確率が70~80%」と推測する。
「メカニズムは未解明ですが、歴史的に南海トラフで巨大地震が発生する数十年前から内陸型地震が増える傾向がある。安政東海地震(1854年)の前も、昭和東南海地震(1944年)の前の40年間にも、中国・四国や近畿を中心に内陸で地震が頻発しました」
発災からまもなく29年を迎える阪神・淡路以降、鳥取県西部(2000年)、新潟県中越(2004年)、熊本(2016年)など、内陸での地震があちこちで起きた。
「そして今年元日の能登半島地震です。発生時期については、一部の研究者の方々が指摘する『2030年代後半』の可能性を排除せず、ここ約30年の内陸型地震を南海トラフの前兆的な活動と捉え、今から最大限の警戒をしておくべきです」
一方、地震学者の間で「大きな地震が起こる」と意見が一致しているのが、「秋田沖エリア」だという。
「秋田沖にある北部の断層の歪みは日本海中部地震(1983年)、南部は庄内沖地震(1833年)で破壊された一方、同じく歪みが生じているはずの秋田沖だけが地震の空白域になっています。地震学的にはいつ起こってもおかしくない。大津波への警戒も必要です」