また、数々の取材や証言から別班に相当する組織があるのは事実だろうが、2013年に当時の安倍晋三首相が、「『別班』なる組織はこれまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していない」と衆参両院で答弁していたように、国は公的に認めてはいない。
要するに、実在しているはずなのに国がひた隠ししている秘密組織という“扱い”が、我々の好奇心を掻き立てたのである。
なんせ、劇中の別班員は国防のためなら任務で人を殺すこともいとわないという描かれ方をされていたので、実像とは違ったとしてもそういった組織が日本にもあるという事実がとてもショッキングであり、熱狂を生み出す要因となったのだろう。
“よくあるスパイもの”で目新しさナシ
日本にも『007』や『ミッション:インポッシブル』のファンは数多くいるが、それらの映画はどうしても別世界のお話のように見えてしまい、ある意味、ファンタジー作品に近い感覚で視聴しているのかもしれない。それに対して、日本を秘密裏に守るために実在する別班員の物語は、日本人にはリアリティをもって身近に感じられたに違いない。
──しかし、話を戻すが、海外の映画ファンからすれば“よくあるスパイもの”でしかなく、目新しさは感じられなかったと推察できる。
これが『VIVANT』が海外でウケなかった最大の原因ではないだろうか。