レッドカーペットをともに歩いた“パートナー”だった(昨年7月のMLBオールスター戦。Getty Images)

レッドカーペットをともに歩いた“パートナー”だった(昨年7月のMLBオールスター戦。Getty Images)

 本当のところ、膨らみ続けた借金を返せると思っていたかどうか、今にしてみれば怪しいものだ。でもギャンブルさえやっていれば、可能性はある。あきらめない限り、いつかは逆転満塁ホームラン? いやいや、それも本当じゃないな。要するに賭場から離れるのが怖かった。等身大の自分が回せる範囲の世界で生きることが、つらくてつらくて仕方がない。そのつらさを一瞬でも消してくれるのがギャンブルと、そう思い込むわけよ。

 じゃあ、なぜそんな思い込みをしたのか。これはあらゆるギャンブラー共通だと思う。それは小運の良さだ。7年前に59歳で亡くなった弟が生前、「姉ちゃんは子供の頃から駄菓子屋でくじを引くと当てていた」と言っていたけど、私は覚えがない。だけど運不運に左右されることをするときに、外れると思っていないんだわ。もちろん勝つこともあるし、負けることもあるんだけど、勝つか負けるか、自分の中では半々より勝つ可能性が大きいと、まあ、こう思っているわけですよ。

 なぜそんな人間になったか。昔、麻雀をしているときに誰かが「博打は親の血というからな」と言っていて、すごく合点がいったのね。私ももの心がついたときはパチンコ店で大人に混じって玉を弾いていて高校生の時は母親とふたりでパチンコ店通い。当時は父兄同伴なら未成年でもOKという空気があったのよ。現に高校の教師に見つかったときに「母ちゃんと一緒」というと「ああ、そうか」とお咎めなし。地方のローカルルールかもしれないけど、当時はそんなものだった。

 それが上京して1人暮らしを始めたら、生活苦でギャンブルどころじゃなくなったけれど、それも時間の問題で、結婚した人が無類のギャンブラー。デートといえば競馬場よ。でも、そんな暮らしが長く続くはずもなく、私たちは離婚した。そして私はアホな男と同棲して別れて再びひとりになって、ああ、さっぱりした! 時あたかもバブル前夜。さ、さ。これからは1人で仕事をするぞと張り切っていた。

 なのに、それも1、2年のことで、運命の人ならぬ、運命のゲーム、麻雀に出会ってしまったんだよね。阿佐田哲也の小説を映画化した、『麻雀放浪記』にすっかりハマったこともある。最初は仕事仲間に教わりながらだったけれど、あっという間に知らない人同士、4人集まればゲームが始まる麻雀クラブに出入りし始めたわけ。

 天上天下、ご意見無用。卓を囲んでいる間は威勢がいい。麻雀は「亡国のゲーム」と言われているだけあって飛び抜けて楽しいし、信じられないような出会いやエピソードも夜の数だけある。けど、負けてひとり帰る足の重いこと。私はいつの間にか麻雀は勝ち負けでなく、憂さ晴らしになっていたんだよね。だから勝って帰ることは滅多にない。最後の最後のゲーム代がなくなるまで負ける。

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