当初、Yは「お金がないと思うからホストには来なくて良い」などと吹聴していたという。しかしこれは、中島さんの恋心をくすぐる、狡猾なホストならではのテクニックだった。
「会いたいと思っても、Yはホストで忙しいから会えない。でもお店に行ったら会える、という状況を作り出して、あえて私を突き放したんだと思います。会いたくてたまらない私は結局Y目当てでホストに通い始め、三ヶ月もしないうちに、ガールズバーの同僚に借金までするようになりました。Yは涙を流して”これ以上頑張らなくても良い”と言いましたが、これもホストの手口。それから間も無く、もっと頑張ってくれるのならといって紹介してきたのが、風俗の仕事でした」(中島さん)
新大学生になり、わずか半年後にはホスト通いのために体を売るようになった中島さん。風俗で働き大金を準備する必要があったため大学に通うのもままならなくなり、程なく退学。身も心もYにコントロールされつつも必死に健気に働いたが、ある日、かつて同じサークルだった同級生の友人から、聞きたくなかった衝撃の事実を知らされ、中島さんの精神は崩壊した。
実は、XもYも元々は同じホストクラブグループの仲間で、自身たちが所属する大学サークルやバイト先の女性に声をかけてはホストに誘導し、さらに風俗の仕事を斡旋していたというのだ。
「友達は、Xと仲が良さそうだった私を心配して電話してきてくれたんですが、まさかすでに私がその被害にあっているとまでは思わなかったようです。頭が真っ白になり、その後、何を話したかも覚えていません。XやYにその事実を突きつけられてもしらばっくれ、”お前が頼んできたんだろう”と私と向き合う気さえない。結局全部仕組まれていて、若い無知な私が引っかかっただけなんです」(中島さん)
X自身も、元々はサークルの先輩の紹介でホストを始めたというが、サークルの女性たちにまで声をかけ、搾取の対象にしようと暗躍し始めたのは、コロナ禍以降のことだったようだと中島さんはいう。
「実際、私の一学年上のサークルの女先輩も、Xに言い寄られて付き合って以降、服装がどんどん派手になり、風俗で働き始めて大学を辞めていたと聞きました。あの時、Xと会話していなければ、ガールズバーで働かなければと、今振り返ってもどうしようもないですが後悔しかありません。大学の中だからと安心していてはダメなんです」(中島さん)