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厚労省による「輸入インフルワクチンは危険」の信憑性に疑問

【書評】『さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか?』(村重直子著 講談社 1575円)

 厚生労働省のお役人にとっては、本書は、新型ウイルスの流行よりも怖いかも知れない。なぜなら、ウイルスの問題ならば、いかようにも情報操作ができる。記者クラブべったりの大手マスコミに、嘘や捏造を暴かれることもない。

 だが本書は違う。米国の病院で現場を踏んだ後、厚労省の医系技官になったという、元キャリアによる告発の書だ。現場を知り尽くした著者の告発に反論するすべは、彼らにはない。

 著者は断言する。日本の医療政策の病根は医系技官にある、と。医系技官とは医師免許があれば面接と論文だけでなれる。大半は現場経験もない「ペーパードクター」。その数約250人。この一握りが、日本の医療を牛耳っている。

 彼らは大臣に都合のいい情報しか上げない。補助金や研究費の配分を決め、医者を支配下に置く。仕事は、「通知」をばらまくだけ。

〈厚労省の通知は、法律と違って国会審議を経ずに出せるため、医系技官の思うがままである。極論すれば、通知は、彼らがこの国の医療を支配する独裁者として振る舞うためのツールとなっている〉

 本書では、例えば、新型インフルエンザをめぐる医系技官の対応を、間違った行政のひとつとしてあげる。無駄だとわかりながら面子のためにやった水際作戦。「輸入ワクチンは危ない」という誤った情報を流したのは、息のかかった国内の製薬会社を守るためではないかと指摘する。

〈役人に自分の生命を預けてよいと判断するのかどうか、多様な情報を正しく知ったうえで、国民一人ひとりが考えなければならない〉

 お上任せでは、安心は手に入らないということか。

※SAPIO2010年10月13・20日号

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