国内

地デジ化のため携帯1台につき年間250円払わされている

 政府が国有地2兆4000億円分を民間企業に無料で与えたとしたら、メディアはこぞって「国家的背任」と追及し、国民は怒りを沸騰させるに違いない。

 テレビ局はそれと同じことをしているわけだが、もちろん自分たちの「不当利得」は報道しない。しかし、いくら我慢強い国民でも、次のカラクリを知れば、黙っていられないはずだ。

 政府のテレビ局への利益供与によって生じた国の損失は、実は、国民が支払う携帯電話料金で穴埋めされていたのである。

 どういうことか。順を追って解明しよう。

 政府はこれまで巨額のカネを使って地デジ移行を進めてきた。テレビ放送の周波数帯が変わることから「アナ・アナ変換」と呼ばれる作業が必要になり、テレビ局の送信設備の対策や家庭のアンテナの向きを変えるといった作業に1600億円もの国費が投じられた。さらに本来、テレビ局が負担すべき中継局の整備費用の支援や相談センターの運営費などに2100億円が注ぎ込まれている。

 これには電波利用料が使われているが、前述のようにテレビ局の払う分は年間約42億円だから、まるで足りない。

 その穴埋めをさせられているのが、携帯電話会社の電波利用料なのである。

 総務省の2009年の調査によると、東京の携帯電話の通話料は1分当たりの料金換算で26.5円。ニューヨークの9.9円、ソウルの14.5円、ロンドンの17.3円と比べて高い水準にある。その原因の1つが、この携帯の電波利用料にある。

 全テレビ局の電波利用料は先に記したとおり年間約42億円、これに対して携帯電話会社(5社)が支払う電波利用料は、13倍の約545億円である。しかも、携帯の電波料はユーザーが持つ端末に対しても、1台ごとに年間250円が課金されている。

 携帯の料金明細には記載されていないが、通話料には国に払う高い電波料が含まれ、地デジ対策費に注ぎ込まれるという仕組みなのだ。

※週刊ポスト2010年11月12日号

関連キーワード

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン