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“爪のアカふりかけ”の恨みを晴らすべく炒飯にゴキブリ粉末

姑だけでも大変なのに、小姑まで……酷いイジメに耐えかねた茨城県27才の主婦・大下邦子さん(仮名)が企てた逆襲とは? (女性セブン1988年12月8日号より)

* * *
「昔からな、いい嫁になるには“さ・し・す・せ・そ”が肝心なんだ。おまえみてえな脳味噌が腐った嫁にゃわからねえかもしんねえけど、耳の穴かっぽじってよーく聞いとけ。さは裁縫、しはしつけ、すは炊事、せは洗濯、そは掃除。おまえはこの“さ・し・す・せ・そ”がからきしできてねえべ」

得々として私を諭す姑にひとつひとつ相槌を打っていた義姉が、「やっぱり邦子さんには、お母ちゃんの爪のアカを煎じて飲んでもらったほうがいいみてえ」

せせら笑うような視線を投げていいました。その夜、夫は農協の寄り合いで出かけ、姑、小姑、私の3人で夕食をとりました。そして、虫唾が走る出来事が起こりました。

「邦子さん、ちょっとここへすわってみろ」――姑の声で食卓にすわると、私は目を疑いました。姑は、畑仕事でまっ黒になった爪のアカをツマヨウジでほじくり出し、私のごはん茶碗にパラパラとふりかけたのです。

「ほれ、うまそうなふりかけごはんができたぞ。これを食えば、私の爪のアカを煎じて飲んだも同じ、家事がきっちりできて、間違いなくいい嫁になるわ、フフフフ」

まるでごまをふりかけたようなごはんを、姑は私の鼻に突きつけました。私は必死で抵抗しました。

「邦子さん、あんた、お母ちゃんがせっかくつくったものを食えねえっていうのが?」

義姉のだみ声が背中にがんがん響き、私は涙が溢れました。

「ほれ、食えっていったら食うんだよ!」

姑は許してくれるはずもなく、とうとう私は、そのごはんを無理やり口に入れられたのです。

その夜、私は泣きながらトイレで何度ももどしました。姑のあのまっ黒な爪のアカを胃袋に収めたことを後悔し、おぞましい姑のアカが私の体にはいったことに身の毛がよだつ思いで、それから一週間は食事がのどを通りませんでした。

1か月ほど前のことです。居間でテレビを見ながら、義姉が姑にいいました。「お母ちゃん、このごろ、ゴキブリがうようよしてんだよな、邦子さんの掃除の仕方が悪いんだよ」

そのひと言で、また姑が勢いづきました。「邦子さん、あんた、こないだこういったっぺ。“部屋も廊下もなめられるようにピッカピカにします”って。なあ、こういったよな。だったら、縁側の板敷き、私の見てる前で、ほれ、なめてみせろよ」

渋っている私の腕をつかんだ姑は、縁側に私を引きずっていき、「ほーれ、なめろ、ほーれ、なめろ」。髪の毛をわしづかみにされて板敷きに顔をすりつけられ、私は床をペロペロとなめさせられたのです。あまりの屈辱に、涙も出ませんでした。

姑と義姉の命令で、それからゴキブリ退治に私は必死で取り組むしかありませんでした。2週間もすると、ゴキブリは一匹もいなくなり、私のある作戦はひそかに実行の日を待っていました。

つい先日の昼のことです。姑、小姑と一緒に畑の除草をしていると、「きょうの昼は、炒飯が食いてえな」姑がそう希望しました。姑は炒飯好きで、それというのも、冷や飯を粗末にしないでいいからです。

草取り仕事を切りあげて、家に飛んで帰った私は、“きょうこそは!”と、腕によりをかけて炒飯をつくりました。ニンジン、ピーマンを炒めたあと、とっておきの材料を使いました。この2週間で捕まえたゴキブリを、私はクッキーの空き缶に大事にしまっておいたのです。30匹近くはいました。

ひからびてひとまわり小さくなったゴキブリたちを細かく刻み、中華鍋に放り込むと、冷や飯をまぜあわせてよく炒めました。ちょうど、姑と義姉が畑から帰ってきました。「どっこいしょ。おお、いいにおいだこど」。姑と義姉はおいしそうに炒飯をパクつきました。

「邦子さん、これ、なんだ? 香ばしくてうまいなや」義姉が満足そうにいいながらお代わりをしました。

「それ、お隣からもらった干しエビを、よーく炒めてみたんですよ」。

私は何事もないようにそう答えました。

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