ライフ

犬の糞害に悩む方に悲報 糞の放置に罰則がない自治体もある

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は、「犬が散歩中にした糞便を放置していく飼い主がいて迷惑しています」と、以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 犬の散歩の際、糞便をそのままにして立ち去る人がいて、迷惑しています。マナーだけでなく、法律違反になることもあるそうですが、規定ではどうなっているのでしょうか。都道府県や市の条例もあるようですが、犬を飼う場合の規定にはどんなものがあるのでしょうか。

【回答】
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの」を廃棄物としています。犬の糞はこれに含まれます。

 そして同法第16条で、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と、廃棄物の不法投棄を禁止しています。違反すれば5年以下の懲役または1000万円以下の罰金という罰則の適用があります。しかし、犬の糞便に廃棄物処理法を持ち出すのは、いわゆる「鶏を割くに牛刀を以てす」の類で、大げさに過ぎるといえるでしょう。

 軽犯罪法では「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物または廃物を棄てたもの」を拘留または科料で処罰できますが、「公共の利益に反して」という点で立証が必要です。そこで糞害に悩む自治体では、条例で規制しているところもあります。

 地方自治法において、所轄する事務に関して条例を定め、住民に義務を課した上、違反した場合には罰則を科することもできるとされています。公園や道路は自治体の管理する施設ですから、その環境美化を促進することになり、こうした仕組みに基づいて、飼い主に犬の糞の始末を義務付ける条例が制定されています。
 
 しかし、すべての自治体が制定しているわけではなく、規制の中身も自治体により違っており、罰則がないものもあります。犬を飼う場合に関係する法律として、動物愛護法と狂犬病予防法があります。前者は、飼い主に対して飼い犬の適切な飼育を求め、愛護を義務付け、みだりに殺傷するなど虐待したり、捨て犬にした場合、犯罪として処罰します。後者は、狂犬病予防のため、飼い主による登録と予防注射を義務付けています。

【プロフィール】1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2011年2月11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン