ビジネス

業者の意図的な操作でFX「ストップロス注文」が餌食になった

FXで損をした個人投資家も多いだろう。しかし、本人が気づかないだけで、中には業者の餌食となっていた人もいる。元為替ディーラー・竹山和樹氏が手の内を明かす。

* * *
頻繁にFXをする人の中には、「ストップ狩り」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。

多くのFX業者では、損失が大きく膨らまないよう、予想と逆に相場が動いた場合、例えば「ここまで下がったら損切りする」というようなストップロス注文を入れることができます。その注文があるラインに集中していた場合に、業者側がレートを“操作”して顧客の証拠金を狩るのが「ストップ狩り」と呼ばれています。インターネットなどで都市伝説のように語られてきましたが、私は、それが実際に行なわれていたケースをいくつも知っています。

例えばこんな具合です。業者には、顧客から「いくらのところに」「どれくらいの規模の注文があるか」が見えています。そこで、ある一定ラインに注文が集中している場合に、社内の“ストップ狩り部隊”が動く。端末の「↓」ボタンをちょんちょんと押すだけで、少しずつ顧客に提示するレートが下がります。

この時、実際にお金をやり取りしてレートを動かしているわけではありません。相対取引ですから、業者が提示するレートは基本的に自由であり、市場と多少離れていても構わないのです。だから「↓」ボタンで〝人為的〟に動かす。ただ、一気に下げては不自然だから、「↓」「↓」「↓」「↑」「↓」「↑」「↓」「↑」のように押して、自然なチャートを作る。いかにも自然な値動きを装いながら操作できた社員は「お前、うまいな」と褒められたり、逆に一気にレートを動かしてしまった社員が「やべえ、今日の最安値つけちゃったよ」と頭を掻くこんな光景が繰り広げられます。

「ここまで下がったら損切り注文を出す」といった、いわゆる逆指値注文は、「損失を膨らまさないためのリスク管理の手段」と言えば聞こえはいいですが、業者側から見れば、「この値段まで下がったら諦めて損切りします」と顧客が宣言しているも同然。ですから、非常に“うまみ”があるんです。

ちなみに、この行為も相対取引である以上、違法ではありませんが、投資家保護という観点からは決して褒められたものではありません。それによって顧客離れが進めばせっかくの収益源を逃してしまうわけで、大手ではほとんど行なわれておらず、小規模の業者に限られると言えます(それに、“ストップ狩り”のためにわざと下げると、市場より低いレートになったことにより別の顧客から買い注文が入って、業者が損失を被る可能性があります)。

※SAPIO2011年2月9・16日号

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン