国内

大前研一氏 日本の漁民は高台の安全住居から港に通勤すべし

「最強国家ニッポン」を造り上げる設計図を提唱してきた大前研一氏が、いまこそ「前を向いて新しい国を造ろう」と力強いメッセージを送る。

* * *
まず、東北をいかに再建するか。これは、あえて厳しい話からさせてもらう。今回の教訓を一言でいうならば、「日本は強い」という安易な自信を捨てることだ。三陸の多くの町は、チリ地震の津波で反省し、対策を取り、これで大丈夫だと思ってきた。

しかし、実は自然の脅威の前に無力だとわかってしまった。ならば、これを「元通りに復旧する」のではいけない。特に、経済的にも困窮するであろう被災者、民間に任せて知らん顔をするようでは、戦後復興で闇市が乱立し、今も東京に消防車さえ入れない街並みがたくさん残ってしまった失敗の二の舞になる。

これは国が責任を持ってやる仕事だ。

陸地と海の間に高い壁を築くという考えは捨て、低い土地には緑地、公園、運動場などを造り、その内側に高台を築いて、人はそこに住むという考え方に転換するべきだろう。近くに丘陵があれば住居はそちらに新たに造り出す。

崩壊した港も、そのまま再建してはいけない。日本には2950もの漁港があるが、これは多すぎる。だから機能も防災も不十分になってしまうのだ。漁民には申し訳ないが、いくつかの漁港を廃止し、そのかわり再建する港は津波防止の開閉式の水門を含めてピカピカの高機能なものにする。

現在、日本中の漁民は職住近接、通勤はなし、魚市場も町ごとにある。都市のサラリーマン同様、少しの通勤は我慢してもらうかわりに、高台に設けた安全な住居と最高の設備を持った魚市場と船着き場で働く環境を作る。

悲しむべきことに、町ごと壊滅してしまった今だからこそ、ゼロから造り直すことができる。恐らく多くの被災者は再び津波が来るかもしれない危険なところに住みたくないと考えているはずで、今ならば賛同してくれる可能性が高い。

※週刊ポスト2011年4月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン