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被災地の仮設トイレ バキュームカー来れずに「使用不可」

 ベストセラー『がんばらない』の著者で、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、医療支援のため、福島県南相馬市に続いて宮城県石巻市と女川町に入った。以下は、鎌田氏の報告である。

 * * *
 トイレに行く。新聞紙の上に大便をし、その新聞紙を丸めて、決められたバケツに捨てるように、とルールが書かれていた。しかし、お年寄りなど、ルールを守れない人がいて、その次の人がその上にして3人も続いてしまうと、もうぐちゃぐちゃである。

 水も出ないので手も洗えない。便に含まれた細菌が手に付着し、細菌感染が蔓延する可能性もある。一時、女川町は避難所でノロウイルスが広がったと聞いた。

 市内にあった50台のバキュームカーのうち、4分の3が失われた。校庭に置かれた仮設トイレもバキュームカーが来れないので「使用不可」の紙が貼られていた。バキュームカーが来ても浄化処理場が崩壊して使えない。

 生もので食中毒になり、下痢をする人が1人出ると、1000人規模で集団生活をしている避難所では一気に感染症が広まる。お年寄りや免疫力が落ちている人たちは、ひとたまりもない。

 さらに追い打ちをかけるのが、津波によって運ばれてきたヘドロだ。そのヘドロが乾いて、砂のようになっている。体育館は土足なので、その乾いたヘドロが舞い上がる。咳をする人が増えた。今後は気管支炎や肺炎も心配だ。

 ヘドロが心配だと聞いて、自分たちで体育館を清掃しようという動きが出てきた。清掃が完了したら、土足禁止にするという。それを聞いた宮城県の医療コーディネーターの石井先生が、1000足のスリッパを届けるという。こういうところは日本人の優れているところだ。

※週刊ポスト2011年4月22日号

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